無印良品の海外展開
無印良品が海外に進出して24年。25の国や地域に進出し、301店舗を出店した。出店速度は決して速くない。1店舗ずつ黒字にして、投資した分のお金を回収できてから新たな店をつくっているからである。そうして、堅実かつ着実に店を増やしている。これは、赤字になって撤退してしまう「負けパターン」を減らすためでもある。
そもそも無印良品は「一人勝ち」するような企業ではない。店舗数は少なくても、各地にコアなファンがいるのは無印良品ならではである。海外でのMUJIの場合、「日本色」が強い事もウリの1つである。それは禅や茶道とったものに代表される日本の美意識や精神性の高さがMUJIの商品の中に色濃く反映されているからである。
海外で通用する商品にするためには、ブランドとしての個性をどう打ち出すかがカギになる。国境を越えてMUJIが支持され、愛される理由は、ブランドコンセプトに多くの人が共感し、お店を訪れてくれるからである。
海外で勝つ7つの方法
①オリジナリティを持つ日本の企業が海外でビジネスを成功させるには、オリジナリティが必要不可欠。オリジナリティは「不必要な競争」をなくしてくれる。日本企業が海外で苦戦する理由の1つは、ライバルとなる企業や商品との競争に勝てないからである。競争相手が多いマーケットに後から参入するのは難しい。
②郷に入っては郷に従え
世界にグローバルマーケットはない。あるのはローカルマーケットだけ。グローバル企業になるという事は、その土地ごとに合わせたビジネスができるという事である。世界各地でローカル対応できる企業が、グローバル企業になれる。グローバルに展開している企業は、現地向けに商品を開発したり、売り方を変えたり、会社の仕組みの部分で現地に合わせようとしている。
③グローバル化の三条件を確立させる
海外でビジネスを成功させるには「ブランド」「ビジネスモデル」「オペレーション力(実行力)」の3つが同時に揃わないとうまくいかない。「ブランド」は「信用」とほぼイコールであるため、ブランド力なしで勝負するのは難しい。まずその国の首都か主要都市の比較的いい場所に出店する事が、ブランド力を獲得する第一歩である。海外で通用するビジネスモデルの1つに、ハイリターンなビジネス構造がある。海外では想像以上にコストがかかるため、厳しい条件でも利益を出せるようなビジネスモデルでなければ生き残れない。
④コストはいつも最重視
海外進出を始める時は、多少の赤字を覚悟してでも出店したくなるが、コストを度外視しすぎるのは失敗の元である。重視すべきは家賃で、売上やブランド力向上の兼ね合いも大事である。そういう意味で「どの場所に進出するか」が重要である。MUJIの場合、売上に対する家賃の比率を15%以下に抑えられる場所でなければ原則的に出店しない。
⑤失敗しない仕組みをつくる
失敗の中から何らかの勝ちパターンを見つけて、少しずつでも確率を上げなければ、本当の意味で勝つ事にはならない。失敗の経験を次に活かすためには、その仕組みをつくる事が大事である。
⑥国別の浸透度に出店ペースを合わせる
無名の企業が海外へ進出して店舗数を増やすにあたっては、その国のマーケットにブランドが浸透するスピードを合わせなければならない。やみくもに店舗を増やしても、赤字が膨らんですぐに撤退する事になりかねない。
⑦海外に向いている社員を選ぶ
海外進出の成否は、現地に誰を送るかによって相当左右される。海外で活躍できる社員に共通の特徴は「自立型」と言える。会社の方針や目標を理解した上で、自分でリスクを取りながら、自分の頭で考えて、やりきる事ができる人が、海外に向いている。