時間は存在しない

発刊
2019年8月29日
ページ数
240ページ
読了目安
290分
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推薦者

最新の物理学の研究によって解明されてきている時間の正体
時間は場所と速度によって、伸び縮みし、それぞれの物体が持っている時間も異なる。「ホーキングの再来」と評される物理学者が、物理学では「時間という概念そのものが存在しない」ということを解説しています。

唯一無二の時間は存在しない

時間の流れは、山では速く、低地では遅い。時間は、所によっては遅く流れ、所によっては速く流れる。このような時間の減速をアインシュタインは100年も前に気づいた。

物体は、周囲の時間を減速させる。地球は巨大な質量を持つ物体なので、その周りの時間の速度は遅くなる。山より平地の方が減速の度合いが大きいのは、平地の方が地球の質量の中心に近いからだ。物が落ちるのは、この時間の減速のせいだ。惑星間空間では時間は一様に経過し、物も落ちない。物体が下に落ちるのは、下の方が地球による時間の減速の度合いが大きいからだ。

時間には、本物という時間がない。異なる時計が実際に指している2つの時間、互いに対して変化する2つの時間があるだけで、どちらが本物に近いわけでもない。空間の各点に、異なる時間が無数に存在する。物理学では、個別の現象を測定した時に個別の時計が示す時間のことを「固有時」と呼ぶ。各現象に固有時がある。

宇宙には現在が存在しない

アインシュタインは、質量によって時間が遅れることを理解する10年前に、速度があると時間が遅れるということに気づいていた。動くものすべてにとって、時間がゆっくり進む。動いている物体に対しては、時間が縮む。つまり、時空は秩序立っておらず、乱れたり変形したりしている可能性がある。

宇宙の時間構造は、時間の層の積み重なりではなく、円錐になっている。「時間的先行性」という関係は、円錐形の半秩序(いくつかの要素の前後関係は確立されるが、すべての要素関係が確立されるわけではない)だ。つまり、宇宙の出来事の間には、完全ではない、部分的な順序が定められる。

これらの円錐は、常に未来に向かいながらも時空の元の点に戻ってくるような構造を作り出すこともあり得る。ブラックホールの近くでは、すべての光円錐がブラックホールの側に傾く。なぜなら、ブラックホールの質量があまりに大きいので時間がひどく遅くなって、ついに「事象の地平線」と呼ばれる縁で、時間が止まってしまうからだ。円錐の縁が、ブラックホールの表面と平行になる。このため、ブラックホールから出るには、未来に向かってではなく現在に向かって動く必要がある。これがブラックホールというもので、光円錐が内側に傾くために事象の地平線が生じ、未来の空間の一定の領域が周りのすべてから遮断される。「現在」の局地的構造が奇妙なことになっているせいで、ブラックホールが生じるのだ。

現実は関係によって定まる

時空は、電子のような物理的対象である。そしてやはり揺らぐ。さらに、異なる配置が「重ね合わさった」状態にもなり得る。光円錐の構造も、過去、現在、未来を分かつすべての点で揺らぐ。このため現在と過去と未来の区別までが揺れ動いて不確かになる。過去と未来の違いも揺れ動き、ある出来事が他の出来事の前でありながら後でもあり得る。

「揺らぎ」があるからといって、起きることが全く定まらない訳ではなく、ある瞬間に限って、予測不能な形で定まる。その量が他の何かと相互作用することによって、不確かさが解消される。

現在という概念は存在しない

時間は唯一ではなく、それぞれの軌跡に異なる経過時間がある。そして時間は、場所と速度に応じて異なるリズムで経過する。時間は方向づけられていない。過去と未来の違いは、この世界の基本方程式の中には存在しない。それは、私たちが事物の詳細をはしょった時に偶然生じる性質でしかない。そのような曖昧な視野の中で、この宇宙の過去は妙に「特別な」状態にあった。「現在」という概念は存在しない。

時間の持続時間を定める基層は、この世界を構成する他のと異なる独立した実体ではなく、動的な場の1つの側面である。跳び、揺らぎ、相互作用によってのみ具体化し、最小規模に達しなければ定まらない。