本を読む人だけが手にするもの

発刊
2015年9月30日
ページ数
256ページ
読了目安
280分
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なぜ本を読む必要があるのか
なぜ、本を読む必要があるのか。本を読む人が著しく減っている時代において、本を読むことで得られるものとは何かについて語っている一冊。

成熟社会ではみんな一緒では幸せになれない

この成熟社会というものに対する理解がないまま、読書の意味を考える事はできない。日本は、20世紀型の成長社会が象徴する「みんな一緒」という時代から、21世紀型の成熟社会が象徴する「それぞれ1人1人」という時代に変わった。「みんな一緒」の時代には、日本人にはパターン化した幸福論があった。日本人が共通の正解として持っていた「みんな一緒」の幸福論だ。

両親の言う事を素直に聞いて「いい子」にしていると、「よい高校」「よい大学」に入る事ができる。「よい大学」に入る事さえできれば、上場企業や有名企業などいわゆる「よい会社」に入れたり、安定した公務員になる事ができた。そこに潜り込む事ができれば、少なくとも課長ぐらいにはなれて、それなりの金額の年収を手にする事ができ、大きな問題さえ起こさなければ定年まで勤め上げる事ができた。

20世紀型の成長社会では、みんな一般的な幸福パターンに向かう周囲の流れに乗っていれば、7割方の人がライフデザインをあまり意識する事なく幸せになれた。しかし、成熟社会になると、ただ頑張っているだけでは「みんな一緒」の幸せをつかむ事はできなくなる。

 

なぜ読書が必要なのか

成熟社会では「それぞれ1人1人」が自分自身で、世の中の流れと自らの人生とを鑑みながら、自分だけの幸福論を決めていかなければならない。20世紀型の成長社会で人生を謳歌してきた人々は、独自の幸福論をあまり真剣に考える必要がなかった。彼らには、退職するまでの会社人生で「1回あがり」ができる幸福論があった。

ところが、もはや国家と企業にはそうした幸福論を保証する能力がない事がバレてしまった。それぞれ1人1人が自分自身の幸福論を編集し、自分オリジナルの幸福論を持たなければならない時代に突入した。自らの幸福論を構築していくためには、幸福論を紡ぐための教養が必要である。「それぞれ1人1人」の幸福をつかむための軸となる教養は、自分で獲得しなければならない。そのためには、読書が欠かせないというところに行き着くのだ。

親が教えてくれるのは、親の生き方であり、親のやり方だ。ところが、その親達は、黙っていても7割方が幸福になれる時代を駆け抜けてきた人達だ。彼らにとって成熟社会は未知の世界だ。だからこそ、人生の糧を得る手段として読書をする必要があり、教養を磨く必要があるのだ。

自分の幸福論を構築するには、世の中をどのように把握し、それに対して自分の人生をどのように捉えるかが重要になる。幸福という定義を自分で決め、現在の自分がどの地点にいて、どちらの方角を目指し、どこまで達成すればいいのかという事まで、すべて自分で決めていかねばならないのだ。

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1人1人の納得解を得るために読書が必要である

成長社会から成熟社会への移行は「ジグソーパズル型思考」から「レゴ型思考」への転換と言い換える事ができる。20世紀の日本の教育は、たった1つの正解を早く正確に導き出し、パズルを誰よりも早く仕上げられるような少年少女を大量生産する事を目指してきた。そして、日本社会には、ジグソーパズルを早く正確に完成させる事ができる人ばかりになってしまった。ジグソーパズル型の人にはできない事が2つある。1つは、最初に設定された「正解」の画面しかつくれないこと。2つ目は、変更がきかないということ。

成熟社会では自らのビジョンを打ち出して道を切り拓いていかなければならない。だが、日本人はまだジグソーパズルばかりやっている。みんな一緒の正解はない。1人1人が自ら納得する解をつくり出す事ができるかどうかがすべてである。

そして、レゴ型思考を身につけるための有効な手段の1つが本である。これからは、本を読む人と読まない人の間には大きな差が生まれ、その差は指数関数的に広がっていく。