時代に合わなくなった知識やスキルは捨て、新たな学びが必要
「プロフェッショナルになる」ためには、自分の型やスタイルを作り上げなければならないが、「プロフェッショナルであり続ける」ためには、確立した型やスタイルを壊し、新たな型やスタイルへと作り直すことが欠かせない。
あるレベルまで熟練した後の学習課題は、時代に合わなくなった知識やスキルを捨てつつ、新しい知識・スキルを取り込む「アンラーニング(学びほぐし)」である。このアンラーニングは、「熟達者」だけに求められるものではなく、「熟達者」になる過程においても必要となる。
人の成長の大半は「経験からの学び」によって決まると言われているが、気をつけなくてはならないのは、経験から学んだことが「固定化」、「固着化」してしまうことである。組織が成功経験にとらわれて、従来のビジネスモデルに固執し、環境に適応できなくなることを「コンピテンシー・トラップ(有能さの罠)」と呼ぶが、この問題は個人にも起こる。
時代や状況が変化しても、「成功を再現」し、さらに良い仕事へと「成功を拡張」するためには、アンラーニングが必要になる。
アンラーニングのパターン
アンラーニングは、主に次の3つのパターンに分けることができる。
①自己完結的な働き方から、ネットワーク志向の働き方へ
②保守的な働き方から、顧客志向の働き方へ
③定型的・受動的な働き方から、革新的・能動的な働き方へ
アンラーニングには強い学習志向が必要
アンラーニングの多くは、外的刺激によってもたらされる。具体的には次の3つの経験が促進要因となっている。
①昇進・異動などの状況変化(70%)
②上司を始めとする他者の行動(20%)
③研修や読書(10%)
特にアンラーニングを後押しするのは、「上司の探索的活動」と「昇進」である。革新的な上司の下で働いている人ほど学習志向が刺激され、内省を通してアンラーニングし、昇進をきっかけにマネジャーは、古いマネジメント・スキルを捨てて、新しいスキルへとアップデートしている。
自分の中の当たり前となっている「型」や「スタイル」に気づくことは至難の業である。この時、重要なのは「内省」と「批判的内省」の組み合わせである。自身の仕事の進め方を「内省」することが、「自分の中の当たり前」を問う「批判的内省」の基盤・土台となり、アンラーニングが行われる。
また、内省や批判的内省を方向づけるのが「学習志向」である。学習志向とは、成長を重視する考え方、すなわち新しい知識やスキルを獲得することを求める目標志向である。学習志向は、「内省、批判的内省、自己変革スキル」を活性化させることを通して、アンラーニングを促す。アンラーニングを行う際には「新しいスキルを習得する難しさ」「自分自身の心理的抵抗感」「職場の理解不足」といった阻害要因が存在するので、こうした障害を乗り越えるためにも、強い学習志向が必要である。
アンラーニングを実践するポイント
①アンラーニングを意識する
アンラーニングという言葉を知っている人と知らない人では、学習面で大きな違いが出る。アンラーニングという概念を頭の隅に置きながら仕事に取り組む子ことで、少しずつアップデート型の学習を進めることができる。
②「学習チャンス」を見逃さない
「昇進・異動」「新しい上司」「研修」は、自分のノウハウを入れ替える学習チャンスである。その際、仕事上の考え方や進め方をチェックして、入れ替える必要のある信念やルーティンを見極める。
③「顧客、革新、ネットワーク、大我」がキーワード
自分の働き方の中に「保守的、受動的、自己完結的、小我(自分のことばかり考えている)」な要素がないかを点検し、「顧客志向、革新志向、ネットワーク志向、大我」へと働き方を変える。
④「学習志向」で自己模倣を乗り越える
学習目標を立て、それを意識しながら行動すれば、学習志向は高められる。
⑤「二段ロケット型」で「型やスタイル」を振り返る
自分では意識しにくい「型やスタイル」をアンラーニングするためには、1日の終わりや通勤途中に、同僚との対話などを通して、定期的に自分の仕事を「振り返る習慣」を持つことから始める。この時「一般的な振り返り」をする中で「深い振り返り」を引き出す。
⑥アンラーニングを「現実的に」計画する
実現可能な現実的な計画を立てる。
⑦他者に「支援を求める」
職場の上司、先輩、同僚、後輩に自身のアンラーニング計画を話し、応援を頼むことも有効な手段となる。また、職場内外における研究会や勉強会など、他者と出会い学ぶことで、自己変革を後押しできる。