HARD THINGS

発刊
2015年4月17日
ページ数
392ページ
読了目安
533分
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起業の困難にどのように立ち向かうべきか
シリコンバレーで一番注目されるベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者が、起業の困難に対してどのように立ち向かうべきかアドバイスを綴った一冊。著者自身が起業家時代に苦難を乗り越えてきた経験を語っています。

HARD THINGS

本当に難しいのは、大きく大胆な目標を設定する事ではない。本当に難しいのは、大きな目標を達成しそこなった時に社員をレイオフ(解雇)する事だ。本当に難しいのは、優秀な人々を採用する事ではない。本当に難しいのは、その優秀な人々が既得権にあぐらをかいて、不当な要求をし始めた時に対処する事だ。本当に難しいのは、会社の組織をデザインする事ではない。本当に難しいのは、そうして組織をデザインした会社で人々を意思疎通させる事だ。本当に難しいのは、大きく夢見る事ではない。その夢が悪夢に変わり、冷や汗を流しながら深夜に目覚める時が本当につらいのだ。

非常に複雑で流動的な問題には、決まった対処法はない。ハイテク企業をつくるマニュアルなどない。会社が失敗のどん底に落ち込んだ時に、社員の士気を取り戻すためのマニュアルもない。困難な事の中でも最も困難な事には、一般に適用できるマニュアルなんてないのだ。但し、具体的な状況は様々であっても、そこには深いレベルで共通し、響き合うパターンがある。

苦闘を乗り越えるための知識

「成功するCEOの秘訣は何か」とよく聞かれるが、残念ながら秘訣はない。但し、際立ったスキルが1つあるとすれば、良い手がない時に集中して最善の手を打つ能力だ。逃げたり死んだりしてしまいたいと思う瞬間こそ、CEOとして最大の違いを見せられる時である。

第一原則は「常に死を意識せよ」だ。毎日が最後の日であるかのように生きていれば、自分のあらゆる行動を正しく実行できる。苦闘を乗り越えるための答えはないが、役に立つかもしれない知識は次の通り。

・一人で背負い込んではいけない
・単純なゲームではない
・長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない
・被害者意識を持たない
・良い手がない時に最善の手を打つ

CEOはありのままを語るべき

会社を経営していると、過度に前向きにならなくてはならないという心理的に大きなプレッシャーを経験する。しかし、CEOはありのままを語り、会社の問題を隠さない方が良い。理由は次の3つ。

①信頼なくしてコミュニケーションは成り立たない
②困難な問題に取り組む頭脳は多いほど良い
③問題を隠し立てせずに自由に語れる会社は迅速に問題を解決できる

人を正しく解雇する方法

①自分の頭をしっかりさせる
②実行を先送りしない
③レイオフの理由を自分の中で明確にしておく
メッセージは「会社が失敗したので、前へ進むために、優秀な人達を手放さなくてはならない」というものであるべき。
④管理職を訓練する
訓練は「マネージャーは自分自身で部下をレイオフしなくてはならない」という黄金律から始まる。
⑤全社員に説明する
⑥みんなの前にいて、みんなと話す

やるべき事に集中する

たとえ失敗の理由がどんなに立派でも、投資家のお金は1ドルも守れないし、社員1人の職も救えないし、新しい顧客を1人連れて来る事もできない。自分の惨めさを念入りに説明するために使うすべての心的エネルギーは、CEOが今の惨状から抜け出すため、一見不可能な方法を探すために使う方がはるかに得策である。

人を大切にする

かつてネットスケープCEOのジム・バークスデールがよくこう言っていた「我々は、人、製品、利益を大切にする。この順番に」。「人を大切にする」事は、3つの中でも頭抜けて難しいが、それができなければあとの2つは意味を持たない。人を大切にする事は、自分の会社を働きやすい場所にするという意味だ。

順調なスタートアップは、その人材基盤をつくるために、採用と面接のプロセスに多大な力を注いでいる。しかし、人への投資がここで止まってしまう例があまりに多い。会社の生産性を改善するためには、教育以上の投資はない事を肝に命じること。教育は社員に義務づけなければならない。