ターゲット ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?

発刊
2016年2月3日
ページ数
180ページ
読了目安
207分
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お客様の心をつかむ戦略
ゴディバジャパンは、この5年間で2倍の売上増を達成した。今やゴディバ全体の売上の約1/3が日本での売上になっている。
ゴディバジャパンの社長が、ゴディバ躍進の戦略について紹介している一冊。

ターゲットと一体化する

「ヒット商品を生むコツは何ですか」と質問された時、「当てるのではなく当たる」と答える。これは弓道の言葉で、的を狙って当てにいくのではなく、当たるように弓を射る事が重要だという教えである。弓道で重要なポイントの1つは的と自分との遠い距離。的の前に立つと、距離に気をとらわれるために、雑念が浮かび、力みが生じ、的を外す。「的と一体になる」これは射の妨げとなるこの距離を意識の中で消滅させるという事である。距離を意識する事がなくなれば、当てる事はずっと容易になる。

「的」とは市場にいるお客様のこと。ビジネスの秘訣とは「当てる」ではなく「当たる」ところにある。この「当たる」という現象を起こすためには、お客様の気持ちと会社の行動が一体にならなくてはならない。品質より広告ばかりに力を入れて、ヒットを無理矢理作る事は「当てる」ということ。これは長続きしない。ターゲットであるお客様と心を一体にした時、お客様との距離は消滅し、本当のヒットが生まれる。

 

なぜ5年間で売上が2倍になったのか

ゴディバジャパンへの社長就任が決まった時、いろいろな友人にこのブランドに対する印象を聞いてまわった。その反応は「高級チョコレート」である事は認めてくれたが「自分のために買ったことはない」「高級感がありすぎて、店に入りづらい」というものだった。最初にすべきは「お客様にもっとゴディバのショップに気軽に来て頂けるようにしなければならない」というものだった。

高級ブランドとしてのアスピレーショナル(憧れ)とアクセシブル(行きやすさ)は両立できる。この2つを実現する戦略プランを立てた。戦略プランが明確になると3つの柱を立てた。

①広告
テレビ広告を利用した「憧れ」のイメージ要素の強化

②製品
ギフトだけではない、自分へのご褒美としてのゴディバ「MY GODIVAキャンペーン」の提案。アイスクリームなど夏季用商品の開発。

③販売チャネル
コンビニエンスストアなどを含む新たな販売チャネルの開拓。47都道府県すべてへの直営店出店など販売場所の拡充。

この戦略により、すべての販売チャネルで売上を伸ばす事に成功した。過去10年間で4%程度の伸びしかなかった日本のチョコレート市場において、ゴディバは5年間で2倍の売上増を達成した。

「ゴディバを高級感がありながら、入りやすく、行きやすい場所にする」という矢は、お客様のハートに的中した。実際に店舗を訪れ、お客様の心と一体化し、無心になったからこそ、アスピレーショナル(憧れ)とアクセシブル(行きやすさ)は両立できると実感した。お客様との距離が消滅すれば、狙わなくても当たる。ビジネスは、常にお客様の立場に立って考える事が大切である。

 

問題の原因を探り改善する

ゴディバの社長に就任した時、既存店の売上は過去3年にわたって下がっている事がわかった。その原因は各店舗への来客数が減っている事が判明した。これはお客様にとって店舗、製品、ブランドの魅力が低下している事を示している。

そこで、店舗と商品、お客様とのコミュニケーション戦略を刷新し、ブランドの魅力向上に集中する事にした。そこで4つのポイントを改善した。

①お客様が入りやすく、何度も来店したくなる店舗づくりの工夫
重厚なイメージの店舗デザインを明るいものに変え、ディスプレイも楽しく工夫。

②商品と価格のバリエーションの増加
低価格帯の商品を増やし、気軽なプレゼントにも使って頂けるパッケージ商品拡充。

③売上が落ち込む夏期の商品開発
チョコレートアイスクリーム、チョコレートドリンクなどの商品開発。

④商品の美味しさを魅力的に伝えるテレビCM
効果的でない街頭や印刷媒体の広告から、テレビCMへ。

 

純粋な心で的に向かう

「的を射てやろう」という雑念は、矢が当たるのを妨げる。ビジネスでも「当たる」という現象を起こすためには、邪な思いを入れずに、心をピュアにする事が重要である。お客様の気持ちを考えず、上司の顔色ばかりをうかがう人や、自分の出世や手柄だけを考えて仕事をする人がいる。このように雑念があると「当たる」事は難しく、ヒットを生み出す事はできない。

「当たる」秘訣は、社員の1人1人が我を捨て、「純粋な心」でお客様と向き合う事である。お客様の気持ちを素直に聞き、良いものを作るために無心で仕事に向き合う事である。的は動かず、そこにある。的を射ようと思えば、自分の思い込みや狙いは一度捨てて「純粋な心」でお客様や仕事に向き合う事が「当たる」ビジネスの始まりである。

 

正しく当てることを目標にする

弓道には「正射正中」という言葉がある。正しい心、正しい姿勢で的に向かい、矢を当てなければならない。ビジネスにとって「正しい姿勢」とは、お客様の事を考え、モラルを持って仕事をするという事である。正しい姿勢で仕事に取り組まなければ、お客様は心から満足してくれない。

きちんとした商品であるか? 販売価格は適正か? 正しい場所で販売できているか? 適切なサービスがなされているか?

会社が売上と利益だけを重視し始めると、社員の中から品質へのこだわりは消えてしまう。これを敏感に感じ取ったお客様は、他の会社の製品に乗り換えてしまう。

参考文献・紹介書籍