幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

発刊
2016年2月26日
ページ数
296ページ
読了目安
366分
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幸せになるための方法
『嫌われる勇気』の続編。アルフレッド・アドラーの思想を、物語形式でまとめた一冊。

他者からの承認を求めない

アドラー心理学では、承認欲求を否定する。承認欲求にとらわれた人間は、他者から認めてもらう事を願うあまり、いつの間にか他者の要望に沿った人生を生きる事になるからである。そのため、アドラー心理学には「課題の分離」という考え方がある。人生のあらゆる物事について「これは誰の課題なのか?」という観点から「自分の課題」と「他者の課題」を切り分けて考える。「あなたは他者の期待を満たすために生きているのではない」。そして「他者もまた、あなたの期待を満たすために生きているのではない」。他者の視線に怯えず、他者からの評価を気にせず、他者からの承認も求めない。ただ自らの信じる最良の道を選ぶ。さらには他者の課題に介入してはいけないし、自分の課題に他者を介入させてもいけない。

誰の課題であるのかを見分ける方法は「その選択によってもたらされる結末を、最終的に引き受けるのは誰なのか?」を考えればいい。「課題の分離」ができれば、対人関係の悩みは軽減される。

 

あらゆる他者に尊敬を抱き、対等な存在として接すること

「課題の分離」を一面的に捉えると、あらゆる教育は他者の課題への介入になり、否定されるべき行為になってしまう。しかし、教育とは「介入」ではなく、自立に向けた「援助」である。子供達の決断を尊重し、その決断を援助する。そしていつでも援助する用意がある事を伝え、近すぎない、援助ができる距離で見守る。たとえその決断が失敗に終わったとしても、子供達は「自分の人生は自分で選ぶ事ができる」という事実を学ぶ。

アドラー心理学では、人はみな、無力な状態から脱し、より向上していきたいという「優越性の追求」を抱えて生きる存在だと考える。つまり人は「自立」を求めている。他者がおらず、自分1人で生きているのだとすれば、知るべき事はなく、教育も必要ない。共同体の中でどのように生きるべきなのか。他者とどのように関わればいいのか。どうすればその共同体に自分の居場所を見出す事ができるのか。

教育、指導、援助が「自立」という目標を掲げる時、その入口は「人間への尊敬」にある。あらゆる他者を尊敬すること。尊敬とは人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二である事を知る能力の事である。もし誰かから「ありのままの自分」を認められたら、その人は自立に向けた大きな勇気を得る事になる。尊敬の具体的な第一歩は「他者の関心事」に関心を寄せる事にある。

 

人の幸福は人とのつながりの中にある

人間は狩猟採集の昔から、その身体的な弱さゆえに共同体をつくり、協力関係の中に生きている。だから我々はいつも、他者との強固な「つながり」を希求し続けている。すべての人には共同体感覚が内在し、それは人間のアイデンティティと深く結びついている。だから、我々は「交友(相手に信頼をよせて対人関係を築く)」を実践し、共同体感覚を掘り起こしていく必要がある。

アドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」と語る。その言葉の背後には「すべての喜びもまた、対人関係の喜びである」という幸福の定義が隠されている。すなわち,幸福になるためには、対人関係の中に踏み出さなければならない。

アドラーは「幸福とは貢献感である」と結論づける。我々はみな「私は誰かの役に立っている」と思えた時にだけ、自らの価値を実感する事ができる。自らの価値を実感し、「ここにいてもいいんだ」という所属感を得る事ができる。

すべての人間は過剰なほどの「自己中心性」から出発する。しかし、いつまでも「世界の中心」に君臨する事はできない。我々は他者を愛する事によってのみ、自己中心性から解放される。自立とは「自己中心性からの脱却」なのである。そして、自立の結果、共同体感覚に辿り着く。「生きている」それだけで貢献し合えるような、人類のすべてを包括した「わたしたち」を実感できる。