レガシーマーケット・イノベーション(LMI)
世の中のニーズは身近なところにあり、小さな不満や不安を解消することが、大きなイノベーションに育っていくことがある。そのためのリソースは、実は既に揃っている。手元の商品を作る技術、その技術にたどり着くまでの道のり、商品を買ってくれる顧客、売っている社員、商品が生み出す利益など、あらゆるリソースが目の前にある。これら過去から引き継いできたリソースを貴重な固有資産と捉え、「レガシー」と呼ぶ。
市場の成長性と生産性が伸び悩んでいるレガシーマーケットに新しいアイデアやテクノロジーを導入し、収益性を高める。イノベーションに富んだ商品やビジネスモデルを作り出し、マーケットを刷新する。レガシーの価値を認識し、レガシーを生かした新しい商品を作り、既存の市場を自らの手で刷新していく一連の道のりが、レガシーマーケット・イノベーション(LMI)である。
既存事業で資金を作り、イノベーションに投資する
レガシー企業がLMIを起こすには、既存の事業で資金を作り、そのお金でイノベーションを起こすという二段構えで取り組むことだ。
①既存事業の生産性を高める(Lの世界)
レガシー企業には既存事業があるため、安定的にプロフィットを確保できる。その優位性を最大化するため、デジタル化や効率化に取り組み、生産性を高める。
②イノベーションを起こす(Iの世界)
既存事業の利益を使って、イノベーションを起こし、さらなる収益化を図る。
既存ビジネスの生産性を向上させる7つのステップ
①オーガニックフィットフェーズまずは企業の文化や市場の特性に馴染む。レガシー企業が持つ自然な成長を加速させるために全身全霊を捧げ、周囲の信頼を得る。
②共感フェーズ
会社や業界を悪く言わない人を見つけ、コミュニケーションを深める。その積み重ねでLMIを主導するチームを作る。
③構造化フェーズ
レガシーアセットの有無や価値を明らかにし、今の事業活動のボトルネックと成長のレバーを把握する。
④デジタル化フェーズ
無料または安価なデジタルツールを導入し、非効率なアナログ業務を改善する。
⑤クイックウィンフェーズ
デジタル化のために導入するツールなどを実際に使う環境を作り、「便利だ」「これは良い」と実感する小さな成功体験を生み出す。
⑥データドリブンフェーズ
構造化とデジタル化を通じて蓄積するデータを共有し、客観的な視点で仕事の評価や改善などに取り組む。
⑦経営理念の浸透フェーズ
会社の経営理念を今一度振り返り、社内に深く浸透させる。
イノベーションを起こすための視点
イノベーションに必要なのは、ゼロから作り出すのではなく、既に存在している何かとか何かを効果的に組み合わせることである。そこでポイントとなるのは、組み合わせのパターンをあらかじめ整理しておくことである。
①既存の商品やサービスにITなどのテクノロジーを組み合わせる
②手元にある商品がインターネットに繋がったらどうなるか考える
③データを収集し、活用する
④VR、AR、5Gなどのテクノロジーとサービスの組み合わせを考える
⑤ブロックチェーンとの組み合わせを考える
⑥別の収益源を作り、無料や格安で提供するビジネスモデルを考える
⑦お金をもらう流れや順番を変えてみる
⑧商流の中抜きを考える
⑩商品やサービス・情報を集めた「場」を提供する
⑪業界のルールや慣習を壊すとどうなるかを考える
⑫稼働していない時間を効率良く埋めるにはどうするか考える
⑬シェアの考え方と組み合わせる
⑭共同購入の考え方を取り入れる
⑮価格破壊のインパクトを出せるか考える
⑯サブスクリプションモデルを考える