アイデアを実現させる建築的思考術 アーキテクチュアル・シンキング

発刊
2019年9月20日
ページ数
351ページ
読了目安
330分
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推薦者

建築家のようにアイデアを具現化する方法
様々な企業ブランドを開発してきたブランディングデザイナーが、建築家の思考を解説しながら、それを様々なデザインや企画に応用する方法を紹介している一冊。

アーキテクチュアル・シンキングの7つのキーワード

協働性、社会性、確実性、統合性という特徴を持つクリエイティブな手段として「建築」という方法を考えると、それは必ずしも「建物を建てる」だけでなく、社会の多くの分野で活かされる可能性のある考え方である。この建築というデザインの方法が持つ考え方を「アーキテクチュアル・シンキング」という。アーキテクチュアル・シンキングには、骨格をなす7つのキーワードがある。

①構造
構造とは、ものをものとして成り立たせるフレームワーク。構造は、柔軟な新しいデザインを生み出そうとすると、時に厳しい制約条件となる。建築のデザインは「構造」と「意匠」に分けて考えられる。デザイナーは、構造を変えられない前提条件として受け入れて、意匠を考えるが、建築の分野で高い評価を受けるデザインは「構造」と「意匠」が融合されたものが多い。つまり、構造の制約を意匠のアイデアとしてしまうようなデザインである。

②コンテクスト(文脈)
建築業界ではデザインに活かすためのコンテクストを「与件」と言う。施主の要望、間取り、立地、予算、法適正など。建築家が最初にやらなければならないのは、どんな建物をデザインしたいのかを考えることではなく、建物を建てるための条件は一体何なのかを正しく理解することである。複雑な与件を整理してデザインを進める時、これらを「解く」という感覚が求められる。コンテクストを解く時に重要なのが「関係性が変わることによる価値の増大」という視点である。

③コンセプト
コンセプトとは目的、課題解決である。建築のデザインでは、最初にまず表現の前に「コンセプト」の良し悪しが問われる。次にコンセプトが、どのように細部まで表現として昇華されているのかというデザインの切れ味も問われる。コンセプトのデザインには「課題の在り方(目的)」と「課題の解き方(表現)」の2段階がある。美しい軸をつくり出し、すべての活動に一貫性が見出せる時がまさしくコンセプトデザインである。

④場
建築の目的は多くの人が集い、使うこと。建築の本質は場づくりにある。建築家は、様々な与件を整理し、課題を横断しながら具体的な建物づくりへと導いていく。その要となっているのが「場」というテーマである。目的のために統合された状態としてデザインされるものが「場」になる。場とは人がいてはじめて場となりえる。デザインの中心には必ず人がいる。

⑤考える
建築家は建物そのものをつくることはない。自分の意図する形を、他の人につくってもらおうと思えば、それは説明するしかない。細かいニュアンスや背景の考え方などは、言葉を尽くして説明する必要がある。常に「考えながら形をつくる」職業である。

⑥共創
大きなものをつくろうとすれば、必然的に多くの人の協力が必要である。大きな建築物や大勢の人数が建物を使用する場合、建築家からクライアントに提案する企画の難易度が上がる。ここで一番大変なのは「合意形成」である。この問題を解決する手法として「ワークショップ」という手法が注目を集めるようになった。設計者と共にクライアントや利用者が一緒になって企画を考えていく。企画の肝は、みんなの意見を設計に変換すること、つまり抽象から具象への橋渡しの瞬間にある。

⑦構想力
目先の課題解決方法も大事だが、もっと大きな視点で社会全体の在り方を見据え、次世代につなぐための方向性を考えること。建築家は、建築自体は自分ではつくらないが、最終形としての建築を生み出すために、手を動かし、物をつくりながらひたすら考え続ける。常にスタディーされる図面や模型は頭と手とを両方使った「考えの形」なのである。建築家はデザインのプロセス自体もデザインだと強く意識している。