ビッグバン・イノベーション 一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ

発刊
2016年2月13日
ページ数
376ページ
読了目安
534分
推薦ポイント 14P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

超破壊的な製品ライフサイクルモデル
製造コストや情報コストの低下によって、破壊的製品やサービスのライフサイクルに変化が生じている。これまでの『キャズム』に変わる新たな製品ライフサイクルとルールを提唱している一冊。

ビッグバン・イノベーション

ビッグバン・イノベーションとは「安定した事業をほんの数ヶ月か、時にはほんの数日で破壊する新たなタイプのイノベーション」である。破壊的製品やサービスは、既に誕生した瞬間から、既存の製品やサービスと比べてより良く、より安い。インターネットやクラウドコンピューティングなどの新技術を用いた破壊的製品やサービスは、瞬く間に成熟産業を揺るがし、既存企業とそのサプライチェーン・パートナーに打撃を与え、すぐにとどめを刺す。破壊的製品やサービスの特徴は次の3つである。

①枠にとらわれない戦略
破壊的製品やサービスは市場に登場した時点で「より良く、より安く、よりカスタマイズされている」。

②とめどない成長
破壊的製品やサービスが登場すると「製品ライフサイクルの変化」は、従来の釣り鐘曲線とは違ってほぼ垂直な勾配を描く。ひとり勝ち現象が起き、製品ライフサイクルは短命化する。

③自由奔放な開発
既存部品とソフトウェアとを組み合わせた低コストの実験を矢継ぎ早に試みる。そして優れた技術とビジネスモデルがうまく融合した時、市場は急激に動き出す。

 

製品ライフサイクルはもはや「キャズム」に従わない

ビッグバン・イノベーションの特徴は、次の3つの要因によってもたらされている。

①製造コストの低減 → 枠にとらわれない戦略
②情報コストの低減 → とめどない成長
③実験コストの低減 → 自由奔放な開発

この3つのコストの低減によって、製品やサービスのライフサイクルは短縮し、釣り鐘曲線は左右非対称に変わり、産業に破滅的な影響を及ぼしてきた。ビッグバン・イノベーションでは、製品やサービスは一気に売れるか、全く売れないかのどちらかしかない。その普及モデルは、屹立した崖のような形を描く。このモデルを「シャークフィン(サメのひれ)」と名付ける。シャークフィンは4つのステージからなる。それぞれの特徴とそこでの対応は次の通りである。

①特異点
イノベーター企業は市場でじかに実験を行い、何度も失敗する。失敗した実験は、間もなく訪れる変化のシグナルでもある。

・ルール
将来を明確に見通す。別の産業から現れる破壊的変化の予兆を見逃さない。新製品や新サービスを投入するタイミングをピンポイントの精度で見抜く目を持ち、サプライヤーや顧客と協業する新たな方法に取り組む。

②ビッグバン
初期の実験が技術の絶妙な組み合わせとビジネスモデルとをもたらす時、実験は新たな市場を創出し、あらゆるセグメントの顧客が破壊的製品やサービスに殺到し、既存産業を崩壊に導く。

・ルール
破壊的製品の爆発的普及とひとり勝ち市場に備える。持てる力を最大限に発揮して相手の活動の進行を遅らせ、できるだけ長く戦うか、場合によって相手を買収する。

③ビッグクランチ
ビッグバン・イノベーションの内破は早い時期に訪れる。あらゆるセグメントの顧客が一斉に雪崩を打つため、市場は記録的なスピードで飽和に達する。破壊的製品やサービスは成熟期を迎え、イノベーションは漸進的になり、成長速度も落ち、産業は一種の死を迎える。

・ルール
破壊的製品やサービスによって市場が飽和状態になった時に、生産と流通を即座に停止できる態勢を整えておく。急激に価値を失う可能性のある在庫や資産、知的財産を処分する準備を怠らない。破壊的変化を読み取り、市場から撤退するタイミングを見極める。

④エントロピー
手元に残ったほとんど形のない資産は、砕け散って新たな特異点を作り出す。古い製品の市場が生き残ったとしても、もはや大きな市場ではない。

・ルール
古くなった技術の新たな活用法を探る。その技術が別の分野のイノベーター企業にとっては、まだ価値を持つ場合も多い。新たな市場を創出するために必要な技術を確認して、次の特異点を作り出す。

 

新たな製品ライフサイクル

ビッグバン・イノベーション時代を生き抜くためには、競合のレーダーよりも広く深く探知できる早期警報システムを備えて、新技術が現れる兆しとその破壊的影響力を検知しなければならない。あるいは、破壊的製品やサービスを取り込み、イノベーター企業と組むという新たな手法も必要になってくる。

ビッグバン・イノベーション市場では、製品やサービスは一気に売れるか、全く売れないかのどちらかしかない。爆発的に売れた場合、市場はたちまち飽和状態に達する。そして、ビッグバン・イノベーションを起こした者には、急激な売上の後に、必ず急激な落ち込みがやってくる。

どの破壊的製品やサービスも、従来の製品ライフサイクルである釣り鐘曲線とはかけ離れている。新しい普及モデルは、屹立した崖のような形を描く。のぼる傾斜は既存企業にとって危険であり、落ちる傾斜は破壊的製品やサービスを放ったイノベーター企業にとって危険である。この普及モデルでは4つのステージが存在する。

①特異点
特異点のステージで破壊的製品やサービスの醸造を促すのは、ハッカソン、オープンソースの部品、ベンチャーキャピタルの支援を受けたイノベーターである。実験は安価に行え、失敗した時に被るリスクも低いために、今この瞬間にも、既存企業を破滅に追いやる実験が盛んに行われている。

②ビッグバン
ビッグバンのステージに入ると、成功も失敗も何もかもが突然に起きる。顧客は殺到するか、しないかのどちらかだ。顧客は「試験利用者」と「市場の大多数」の2種類しかいない。ここでは、本質的に「ひとり勝ち市場」である。

③ビッグクランチ
ビッグバンのステージでは革新的な技術とビジネスモデルとが一体となって大爆発が起こり、市場は劇的に膨れ上がる。だが、やがて飽和に達して内破する。かつて何年も何十年もかけて飽和した市場は、今では数ヶ月か数週間で飽和する。

④エントロピー
ビッグクランチが終わりを告げる頃、顧客は古い産業を棄てて、新しい産業へと移動してしまっている。ほとんどの既存企業は、価値のない資産をできるだけ早く処分して、滅びゆく産業とサプライチェーンとを後にし、まだ価値のある資産を携えて、新たなエコシステムへと移動する。新たな世界で利益の見込める居場所を見つけ出す企業もあれば、他の産業にピボットする企業もある。破綻する企業もあれば、ただ消えゆくブランドもある。