情報や知識をどのように使うかに価値がある
誰しも手にしたスマホによって、世界のあらゆる情報に、どこにいても素早く繋がれるようになった結果、「知識」の価値は急落した。「より多く」「より正確に」記憶することは、インターネットで調べればすぐわかる時代に、ほぼ意味をなさなくなっている。「何でも覚えている」「よく知っている」ことは、強みでも何でもなくなった。しかも、世の中は大きな変革の時であり、過去の蓄積でしかない知識だけでは太刀打ちできない。いくら過去問を紐解いても、正解が載っていない世の中になっている。
情報や知識をどのように使うか、どうつなぎ合わせて活用するか。そうしたCPU(中央処理装置)的な思考こそが、本当の意味で賢い、つまり価値あることである。このCPU的なアタマの良さを「教養」と呼ぶ。つまり、教養とは「考える力」のことである。
自分の頭で考えて、自分なりの意見、結論を出していく過程を「マイ・ストーリー」を作ると名付けた。マイ・ストーリーを作る上で大切なのは「川を上り、海を渡る」ことである。
・川を上る:「そもそもそれって何だろう?」という成り立ち、つまり歴史的経緯を探る
・海を渡る:「他の国ではどうしている?」と他国と比較する
前者は「時間」という軸で、後者は「世界」という軸で考える。1行のニュース記事を読んだだけでは、何も生まれない。情報を情報として受け止めるだけでなく、その裏にある事実、データ、歴史、関係性を料理の材料のように並べる。その上で、自分の中に蓄積された経験や肌感覚をスパイスにして、考えを巡らせて、時に妄想などを含めた上で、はじめて「マイ・ストーリー」は紡がれる。
考える「型」をつくる
考え方にもいくつかの「型」がある。
①川を上る
目の前の課題は、もっと大きな課題(源流)を切り取った一部でしかないことがほとんどである。真の課題、本当の狙い、隠れた本質はどこにあるのか。それらを探るためには、一度原点に戻るのが一番いい。
②海を渡る
海外にまで視野を広げて、他国や他の地域と比べてみる。
③バルコニーを駆け上がる
フロアを確認した上で、そのままバルコニーに駆け上がると、上からはホール全体が見える。優れたリーダーは、バルコニーに駆け上がったからこそ見えた修正点を持って、もう一度フロアに戻る。現場でないとわからないことも多いが、現場にいるからこそ見えないものもある。
④場所を変えて考える
視点を変えなければいくら考えてもわからないことも多い。移動する、場所を変えるということも、考えを深める上では必要なことである。環境が変われば、気分も変わり、考えも変わることはある。
⑤体験してから考える
経験しないとわからないことがある。現場に足を運んで体験することが大事である。
⑥書きながら、話しながら考える
すぐにメモをして、後で時々見返す。「書く」という触感を伴う行為は、五感を刺激して、脳に記憶として定着しやすくなるとともに、考えるという行為につながりやすい。
⑦基礎を学んでから考える
どの分野においても、基礎をないがしろにすると、事の本質を理解し大成することはできない。基礎があっての応用である。
考えることを習慣づけるための心構え
①アウェイで勝負する(留学、他の業界の勉強会、学校)
②フェイクニュースに惑わされない
③対案を出す(批判だけで対案を出せないのは考えていない証拠である)
④常にユーモアを持つ
⑤視線を未来に向ける