時間の分散投資の課題
過去138年、株のリターンは債券を上回ってきた。どの年をとっても、とは言えないにせよ、どの世代をとってもそうだった。平均では株のリターンは債券を5%上回っている。株の超過リターンは、今後はそこまで高くないかもしれないが、それでも長期では株を選ぶ方がいい賭けだ。
投資金額そのものを見ると、若い間は老いてからに比べて市場にほとんど投資しない。インフレを勘定に入れてもなお、典型的な投資家は60代の始めには20代終わりの20〜50倍以上も株式に投資している。20代の間にほんの数千ドル株を持っていても、ずっと後になってずっとたくさん持つことになる株の分を、ほとんど分散できない。ほとんどの人は株式市場へのエクスポージャーをもう20年分増やした方が、リスク分散効果で安全な投資ができるのに、実際にはそうしていない。リスクを40年の年月にわたって分散する代わりに、彼らは現役である時間の最後の10〜20年に、集中してリスクをとっている。
ライフサイクル投資戦略
投資を長い期間に分散させるということは、若い時にもっと投資するということだ。そこでお金を借りるのだ。若い時にお金を借りて投資するのは賢明なやり方だ。生涯にわたって株式市場へのエクスポージャーを一定に保ち、若い時のエクスポージャーを増やして年取ってからのエクスポージャーを減らせばリスクを抑えられる。
時間の分散投資をもっとうまくやればポートフォリオのリスクは21%減らせる。レバレッジを使ったライフサイクル投資戦略を使えば、今日の市場でも、昔ながらの投資戦略を上回る結果を出せる。時間の分散投資のメリットは資産の分散投資のメリットより大きい。年ごとのリターン間の相関は、銘柄ごとのリターン間よりも小さいからだ。
若い間はお金を借りて株を買おう
信用取引で株を買うと株式にらいするエクスポージャーを増やせるが、同時に短期のリスクも高まる。しかし、お金を借りて株を買えばエクスポージャーが大きく偏るのを均せるから、長期ではリスクが減る。但し、信用取引で株を買うのはリスク分散の意味では良いが問題もある。株が大きく下がると追加の担保を求められることがある。さらに、証券会社から高い金利を取られる。そのため、信用取引で株を買うのは効果的ではあるが難点が多すぎる。
そこで、実質的に同じだけのレバレッジが得られる方法として、コールオプションを買えばいい。コールオプションの良いところは、担保がいらない上、市場に対するエクスポージャーを安いコストで2倍にできることだ。
ライフサイクル投資戦略の公式
株式投資目標額=「一生の間に貯金する額の現在価値」×「サミュエルソンの割合」
働いている間はずっと、サミュエルソンの割合に一生分の貯金の現在価値をかけたものを株式の保有額の目標にする。
一生の間に貯金する額の現在価値は、今の財産は現金にするといくらになるかと、これから貯金に回していく額の現在価値を合わせたものだ。
サミュエルソンの割合とは、適切な形のリスク選好の下で、個人は毎年の株式市場に対するエクスポージャーを一定に保つ割合だ。これは以下の計算式で計算できる。
サミュエルソンの割合=1.58/RRA(相対リスク回避度)
例えば、収入の20%までリスクに晒していいという人で、サミュエルソンの割合は42%(1.58/3.76=0.42)となる。