人に頼まれると断れない
スカスカのカレンダーを見て「ひと月後なら予定がガラ空きだし、断れるわけない」と自分に言い聞かせるのは間違っている。実のところ、予定が空いているのではなく、細かい予定がまだ決まっていないだけだ。そしてその日が来ると、その余分なお願いごとがなかったとしても、やるべき事がありすぎて手一杯の状態だ。その時初めて、引き受けるんじゃなかったと後悔する。望ましい優先順位を守るための方法は3つ。
①頼み事をされるたびに「来週だったらどうするか」と考える。
他の約束より優先するつもりがないなら、きっぱりノーと言う。
②頼み事をされたら、予定表を見てその日に動かせない予定が入ってたと想像する。
残念だと感じるなら、頼み事を引き受ければいい。
③一旦、頼み事を引き受けた後で、それがキャンセルになったと想像する。
もし喜びを感じるなら、ノーと言う。
転職したら幸せになれる?
本当に考えるべきは「不満の根っこは何か」という事だ。仕事が不満の原因なら、転職すればよりよい未来に近づける。でも惨めな気持ちの原因が自分自身にあるなら、転職しても無駄だ。今度休暇をとって、転職を検討しているタイプの会社でボランティアをすると、今仕事で喜びを感じられない事の根本原因が今の仕事にあるのか、自分にあるのかがはっきりする。
引っ越すべきか
引っ越すべきかどうかは、3種類の決定バイアスに悩まされる。
①授かり効果
今の状況を基準にして、それ以外のどんな選択肢も、現状からのネガティブな変化と捉えてしまう傾向。
②現状維持バイアス
現状を維持する決定は、現状を変える決定と全く違うように感じられる。現状を変えない事も重大な決定だとは思わない。
③不変性バイアス
私達は一旦決めてしまうと二度と変更できないように思われる重大な決定を迫られると、その永続性に怖気付いて、一層重大で手ごわいように感じる。
考えるべきは、引っ越しを「6ヶ月のトライアル」と言い換えてみる事だ。
レベルの低い環境で一番を目指す?
自分が進歩しているという感覚を持つ事は、私達が幸せでいるために大切だし、満足感や自尊心、同僚からの評価にもつながる。前進しているという実感の必要性が広く認識されているから、多くの企業が管理職のための様々な肩書きや中間的な役職を設けている。前進しているという実感の美しさ、わかりやすさ、安心を考えると、今の仕事をやめて、あまり優秀でない同僚のいる職場に移ろうとする前に、新しい役職への昇進を得られないか、試してみる価値はある。
なぜ外部の人材の方が評価される?
研究では、デート相手に関して言えば、相手の事を知れば知るほど、恋愛感情は高まるどころかむしろ薄れるという結論が出た。恋人候補の事をほとんど知らない時、私達は想像を働かせて楽観的すぎる方法で情報の欠落を埋めるものの、その後実際に会ってお茶する内に、過大な期待が砕け散るという訳だ。また失望は何度も繰り返される事がわかった。
人を雇う場合もそうだ。外から招かれたCEOは、生え抜きのCEOに比べて高い報酬を得るが、実績はむしろ低い事を示す証拠がいくつか挙がっている。この場合も情報不足のせいで、期待がむやみに高まるのが原因ではないか。
特売品をプレゼントするのはダメ?
ワインが高価であればあるほどおいしく思える事は昔からわかっている。でも特に興味深いのは、飲む人が値段を知っている時にしか、この相関関係は成り立たないという事だ。これを踏まえて、まず決めなければならないのは、友人達にワインの値段を教えるかどうかだ。教えないなら安い方を持っていこう。
恒例イベントは守るべきか?
一般的にいって、人はよく知っている事をやり続けたいという心理がはたらく。旅先なのにおなじみのチェーン店に行き、おなじみの料理やおなじみのアイスクリームさえ注文してしまうのは、私達が確実な物事に惹かれるからだ。わかりきった事をするより新しい事にトライした方が、楽しいかもしれないが、気に入らないかもしれない。それに「利益の喜びより、損失の悲しみの方が大きい」という損失回避の心理法則を考えると、惨めな経験をする不安が重くのしかかり、リスクを冒して新しい事を試す気にはなかなかなれない。
これは3つの大きな理由から間違っている。1つには、長い目で見てこの先20年ほど休暇や外食の機会がある事を考えると、決まった選択肢に落ち着く前に、他にどんなものがあるのか、自分達は何が好きなのか、どういう経験がベストなのかを開拓する価値があるのは間違いないからだ。2つ目として、多様性は人生のとても重要なスパイスだから、そして、最後に休暇は期待に胸を膨らませ、旅行そのものを楽しみ、後から思い出をかみしめる。この内、一番時間が短いのは、実際に旅行している時間だ。これらを考え合わせると、新しい事を試すべきだ。
年々時間が経つのが早くなる
歳をとるにつれて時間が経つのがますます早く感じられる。人生の最初の数年は、感じること、することのすべてが生まれて初めての経験で、その時にしかできない事が多い。だから強烈な印象が残り、記憶がしっかり焼き付く。でも年月が経つにつれて、新しい経験は減っていく。大人になる頃には既にいろんな経験を積み、多くの事を成し遂げているからだ。もう1つ、喜ばしくない理由として、私達は日々の雑事にますます追われ、新しい経験に手を出す事も減っていく。
自分の経験した事をよく覚えている人ほど、人生に対する満足度と幸福度が高い事がわかっている。新しい事を試し、変化に富む生活を送るようになれば、時間の進み方が遅く感じられ、幸福感が高まるはずだ。