高級ビールで日本を変える

発刊
2020年12月21日
ページ数
203ページ
読了目安
233分
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ミシュラン星付きレストランで扱われる高級ビールはどうして生まれたのか
ミシュラン星付きレストランなどの一流料理店だけで扱われている日本初のラグジュアリービール『ROCOCO Tokyo WHITE』が誕生するまでの物語。そもそも、なぜ高級レストランではビールを頼みづらいのか、という疑問から始まり、どのように事業を立ち上げていったのかが書かれています。

なぜラグジュアリービールが生まれたのか

ある日、東京のある有名レストランで集まっていた時、「なぜこういうお店ではビールが飲みにくいのかな?」という疑問が投げかけられた。ミシュランの星が付くような一流レストランでは、なんとなくビールをオーダーしづらい。オーダーしづらいと思っている心の裏には「ファインダイニングでビールを飲むのは場違いで恥ずかしいことだ」というひけ目がある。
実際のところフレンチのお店でビールを飲むのは、マナー違反とまでは言わないまでも、望ましくないもののように思われているのは確かである。そもそもなぜレストランでの乾杯はシャンパンなのか。本当に全員が乾杯にはシャンパンがいいと思っているのか。フレンチの一流レストランでシャンパンをオーダーすれば、一杯で2000〜5000円が相場である。

 

「ファインダイニングにふさわしいラグジュアリーなビールがないからじゃないか?」という1つの仮説が浮上した。そのお店の「格」にふさわしいビールがあれば、きっと堂々と注文できるはず。そこでまた新たな疑問が湧いてきた。「なぜラグジュアリーなビールがないんだろう?」と。「きっと今までに誰もやろうとする人がいなかったんだね」という言葉が口をついて出てきた。ラグジュアリーなビールがあれば、レストランでこれまでになかった新しい体験ができるはずだ。

 

日本はミシュラン星付き飲食店が世界で最も多い国である。その中でも東京には2020年で星付きレストランが226店掲載されている。東京は食に関しては圧倒的に世界トップの座にいる。にもかかわらず、アメリカのクラフトビールの真似でいいのかという疑問があった。アメリカのクラフトビールは、ピザやフライドチキン、バーガーなど、味の濃いアメリカンフードに合う飲み物として開発されている。濃い味の料理に合うアメリカのビールでは、日本の料理に合わないことは明らかである。

 

すべてにおいてこだわり抜いている東京のレストランが、ビールだけはスーパーで1缶200円程度で売られているものをそのままお客様に提供していることに、お店の方々が疑問を感じていないことに驚いた。

 

常識を疑え

2016年夏に、日本人1人と北米人2という異色のチームが動き出した。構想から約1年半の開発期間を経て、2018年3月に日本初のラグジュアリービール「ROCOCO Tokyo WHITE」を発売するところまで漕ぎ着けた。滑らかな富士山の伏流水を使用し、フルーティーな香りとシルクのような繊細な味わいが特徴で、白ワインのグラスに注いで飲む、日本で初めてのラグジュアリービールである。

苦味が控えめなことから従来のビールでは合わせることが難しかった繊細な懐石料理や、味の構成が複雑なフレンチとの相性もよく、著名なシェフやソムリエたちからもその贅沢なおいしさが認められ、現在は日本全国のミシュラン星付きの多くのレストランで取り扱ってもらえるようになった。現在、1本1500〜2000円の値段で販売してもらっているが、注文数は飛躍的に伸びている。

 

ロココビールは、既存の市場を奪いにいくという発想がない。同様にクラフトビールと競うつもりもない。全く新しいカテゴリーのオプションを提供することで、お店にもお客様にも喜んで頂ける特別なものを作ろうと考えた。

問題解決の1つは、「料理をより美味しくするビールを作る」ということ。そのために、繊細な味の料理と合わせられるビールを作ることを考えた。そのために数多くのお店のシェフやソムリエの方々をはじめ、ファインダイニングをよく利用する食通の方々に試飲をお願いし、フィードバックを頂いた。そしてその声を反映して作り上げた。

初めから、自分たちが飲みたいビールを作ろうとは思っていなかった。ファインダイニングという限られた場所にある、限られた人たちの問題を解決する商品作りにチャレンジした。

 

ロココのビジネスを通じて痛感しているのは、聞く耳を持つことの大切さである。商品開発のところではそれだけに集中していた。レストランの方々にも、一般の男性にも女性にもヒアリングした。なぜなら、自分たちの知識や理解が足りないからである。話を聞けば、固定概念が必ずしも正しいわけではないとわかる。何事も決めつけてはいけない。