まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか

発刊
2008年2月1日
ページ数
387ページ
読了目安
661分
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投資家の心理がわかる本
「人はどうして、投資で儲かると自分の実力だと思い込み、損をすると運が悪かったと思うのか」という問いに答える本。
著者は、トレーダーとしての20年以上にわたる経験を持ち、行動経済学の観点から、人間の思考と感情との関係をなどわかりやすく教えてくれる。

運と実力

物事は私たちが思っているよりも偶然である。偶然の要素が多い世界で、能力が果たす役割は小さい。
ウォーレン・バフェットに能力がないとは言わない。しかし、投資家をでたらめにたくさん集めれば、ほとんど必ず誰かは、運だけでバフェット並みの成績を上げる。

私たちは偶然が果たす役割を過小評価している。実力を運と勘違いして生じるコストは、運を実力と勘違いして生じるコストよりも大きくない。しかし、多くの場合、運を実力と取り違える傾向が強い。特に経済活動においては、その影響は致命的な影響を与える。

大きな成功は、不確実な結果のばらつきが原因である。そのことに気づかずに多くの投資家は、膨大なリスクを知らずにとっているか、あるいはとても運がいいかのどちらかである。

 

なぜ運と実力を勘違いするのか

運と実力を勘違いするのには、不確実性のある状況において脳の働きにバイアスなどが生じ、合理的な判断ができなくなるためである。

その一例には次のようなものがある。

リスクや確率の事になると、私たちの脳は表面的な手掛かりに飛びついてしまう。リスクに気づいたり、避けたりといった活動のほとんどをつかさどるのは、脳の「考える」部分ではなく「感じる」部分である。つまり、リスクを避けようとする時、合理的な考えは、ほとんど関係しない。

私たちは普通、歴史から学ばない。人間は生まれつき、文化的な方法で経験をやりとりするようにはできていない。人は無意識のうちに学習し、意識できる部分では学習した内容を覚えていない場合がある。さらに私たちは自分自身の過去からさえ学ばない。

歴史を軽んじていた連中はみんな大損した。大損したトレーダーに特徴的なのは、自分は世界がどんなふうになっているか、とてもよく知っているので、ひどい目にあう可能性はないと思い込んでいることである。彼らがリスクを取れるのは、わかっていないからである。1987年の株式市場暴落、1990年の日本の市場融解、1998年のロシア危機など、例はいくらでもある。

過去を振り返ると、いつも過去は決まっている。観察できる過去は一つだからである。私たちの頭は、ほとんどの事象を、起きる以前ではなく起きて以降に照らして解釈する。
事象が起きた当時の情報を過大に見積もってしまうことを後知恵バイアスと呼ぶ。後知恵バイアスには、過去を予測するのがうまいため、将来を予測するのもうまいと勘違いさせる効果がある。

ファイナンスの人たちは、稀にしか起きない事象を無視する。統計などの世界でも、極端な値を取り除いてしまう。しかし、重大な結果をもたらす事象は、無視してはならない。