創業メンタリティ

発刊
2016年7月15日
ページ数
284ページ
読了目安
385分
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推薦者

持続的成長を成し遂げるためには何が必要か
持続的成長を成し遂げる会社は、事業を軌道に乗せた野心的で大胆な創業者の態度と行動を持ち合わせている。組織に視点を向けて、大企業病に陥らずに、持続的に会社を成長させるためにはどのようにすれば良いのかという戦略が提示されている一冊。

予測可能な3つの成長の危機

成長すると企業は複雑になるが、複雑性は静かに成長を蝕む。このパラドックスこそが、最低限の利益成長をここ10年続けている企業が10社に1社ほどしかないこと、85%の経営幹部が企業が成長できない原因に、コントロール不可能な外的要因ではなく社内の問題を挙げている理由である。

成長を維持する鍵は組織内部に隠れており、あらかじめ知ることが可能なのである。あらゆる企業が見舞われる成長の危機は3つあり、これらは3つとも予測可能であり、避けられることが多い。

①過重負荷
成長著しい新興企業がどんどん規模を拡大しようという時に、経営陣が経験する、社内の機能不全と対外的な勢いの喪失を指す。

②失速
急速に成長する組織が複雑化・階層化し、かつて組織にフォーカスと活力を与えていた明確な使命が見失われて、業績に突然ブレーキがかかる。

③急降下
急降下状態に陥った企業はコア分野で成長が完全に止まり、最近まで成功を支えていたビジネスモデルが急に通用しなくなる。

 

持続的成長を遂げる会社が持っている意識の枠組み

持続的成長を成し遂げる会社は、事業を軌道に乗せた野心的で大胆な創業者に共通に見られる態度と行動を持ち合わせている。収益の伴った成長を遂げた企業は自らを革新勢力だと考える。満たされていない顧客のために業界基準や業界そのものに戦いを挑み、全く新しい産業を打ち立てようとする。

このような会社には全社員が自分事と思えるはっきりした使命感と焦点が芽生える。さらには各自が強い個人的な責任感を抱くようになる。組織的には、複雑性や官僚主義など、戦略をつつがなく実行する障害となりうるものがすべて排除される。ビジネスの細かいところにまでこだわり、顧客と直に接する現場の社員を称える。こうした態度と行動が組み合わさってできる意識の枠組みこそが、成功の秘訣である。これを「創業目線」と呼ぶ。

 

創業目線

創業目線は、成長途中の新興企業が規模と資金力で勝る既存企業と競争する時優位に立つ鍵であり、大きく3つの側面に分けられる。

①革新志向
革新への強い思い。大成功を収めた創業者の中には、満たされていない顧客のため業界に戦いを挑むことこそが起業であると考える者がいる。革新志向は創業者に端を発するのが一般的だが、長寿企業の多くでは組織の上から下までこれが行き渡っているため、創業者がいなくなっても残り続ける。
最強の革新勢力には「大胆な使命」「尖り」「無限の広がり」という3つの特徴がある。強い革新志向は、企業に対内的にも対外的にも焦点と目的を与える。

②オーナーマインド
小規模企業には、大企業に対して有利な点がある。役職に関係なく、全従業員がオーナーマインドに基づいて意思決定と目標の追求をすることだ。これは「キャッシュ重視の姿勢」「行動への衝動」「反官僚主義」という3つの要素から成り立っている。

③現場へのこだわり
ほとんどの創業者は、会社で最初の販売員、商品開発者、あるいはその両方でもある。顧客体験とすべての業務を細部まで把握したいという知的好奇心が旺盛で、現場に生き、現場で息をする。そうして最前線で培われた直観は、あらゆる意思決定の際に使われる。現場へのこだわりは創業目線に不可欠な要素で、「現場の従業員」「1人1人の顧客」「事業の細部」という3つが対象となる。

多くの企業は大きくなるにつれて創業目線を失ってしまう。成長と規模拡大を目指しているうちに組織が複雑になる、プロセスやシステムが増える、革新志向が薄れる、人材レベルを維持するのが難しくなるといった問題が出てくるからだ。

創業目線こそ、持続的成長を実現するために大企業も中小企業も使える、真に強力な戦略である。この創業目線を組織全体に根付かせることで、持続的成長を高めることができる。