この世に命を授かりもうして

発刊
2016年8月25日
ページ数
180ページ
読了目安
143分
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大事なのは人生どう生きたのかの中身である
約7年かけて4万kmを歩く荒業「千日回峰行」を二度行った天台宗の僧侶が最後に残したメッセージ。病との向き合い方、死との向き合い方、生きるとはどういうことなのかについて語られている一冊。

病と向き合う

どうしようかな、なんて悩むことはない。やるかやらないかのどっちか。イエスかノーか。自分の気持ちをこうと決めればいい。手術してうまくいくかいかないかなんて、お医者さん自身だってわからない。神様仏様しかわからない。そんな余計なことに悩まないで、自分自身を納得させることを考えればいい。

もう自分は人生このへんでお終いになってもいいやと思ったら、治療などしなくていいと考える道もある。だけど生きていると色々楽しいこと、面白いことがある。これで死ぬのはもったいない気がする。今ここに生かされている命を大切にしたいなと思ったら、やはり病気に対して真正面から向き合って、もうちょっと頑張ってみようと皆思うのではないか。

 

死は怖いものではない

人間は生まれた時から必ず死ぬということを約束されている。それが早いか、遅いか。肚くくってしまったら、どうってことない。みんな高度な知識を色々詰め込んでいて、頭の中でうわーっと渦巻いている。しかし、空っぽだと難しいことを色々考えないから答えがすっと出る。知識がないと、どうしたらいいかっていう方法もわからないし、ただ仏様から頂いた智慧をもとにするしかない。だけど色々知識がない分、迷わないで済む。知識は大事だけど、知識で頭の中が一杯になるより、少し「空き」を作っておいたほうがいい。

地球ができて46億年、人類が誕生してからだって500〜600万年という。一人の人間の一生なんて、それから考えたらほんの一瞬。だけど、一人の人が生まれて、死んで、また次に生まれて、死んで、ぐるぐるぐるぐる命をつないでいる。生命というのはその輪廻の繰り返し、自分の今生の命もその一部だと思えば、死んじゃったらそれで全てがお終いってことではないと思えるようになる。

「無始無終」という言葉があるが「始め無くして、終わり無し」、始まりも終わりもなくて限りなく続いていくということだが、命っていうのはそういうもの、連綿と繋がっていくものだって思っていればいい。死ぬ時は死ぬし、生きる時は生きる。今ここに生きていることに感謝の気持ちを持って、「一日一生」と思って過ごすこと。いつもと同じような変わり映えしない1日と思うかもしれないが、この「今日」の日がまた来ることはない。

 

いま、この瞬間を大切に

その瞬間、瞬間を大事にしないと、二度とそういうものに出会わない。とく一生に一度の出会いだと思って大切にしようと言うけど、準備万端整っているような時に出会うのではなくて、予期せぬところで出会うことがある。過ぎ去った時間は取り戻せない。だから、その時の一瞬の出会いを大切にしなければいけない。

今こうして安心していても、死はどこにでもある。何があるかわからない。生きている時間、この日数も地球の中の一コマと考えれば、命を落としたからといって、何もくよくよすることではない。過去のことを、昔はこうだったんだって考える必要はない、過ぎ去ったことをあれこれ言ったって、もう時間は後戻りしない。「いま」が大切、そして「これから」が大切。

人の死は、ご縁みたいなもので、仏さまが「ここまで」と決めていたら、そこから先はないのかもしれない。だったら肚を決めて、でんと構えて、日々悔いのない人生を過ごせばいいのかもしれない。その日その日を大切に生きていることに、本当に感謝していくことの方が大事である。