2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ

発刊
2020年12月24日
ページ数
448ページ
読了目安
732分
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テクノロジーによって、世界の変化がさらに加速していく理由
あらゆるテクノロジーの進化が融合することで、変化はさらに加速する。テクノロジーが進化する要因とその進化がもたらす破壊的変化を解説しながら、2030年の世界がどのようになっていくかを紹介しています。

テクノロジーの融合で破壊的変化は加速する

今、多くの産業に破壊的変化が起きていて、しかもこれからさらに大きな変化が起ころうとしているのは、テクノロジーの「コンバージェンス(融合)」の結果である。コンバージェンスを理解するには、基本から始めるのがいい。ムーアの法則は死が近いと言われるが、2023年には1000ドルクラスの普通のノートPCが、人間の脳と同じレベルのコンピューティング能力を持つようになる。その25年後には、同じクラスのノートPCが地球上の全人類の脳を合わせたのと同じ能力を持つようになる。

 

それ以上に重要なのは、このペースで進歩しているのは集積回路だけではないということだ。あるテクノロジーがデジタル化されると、途端にムーアの法則にのっとって「エクスポネンシャル(指数関数的)な」加速が始まる。今このペースで加速しているテクノロジーの中には、人類が創造した中でも最も強力なイノベーションがいくつもある。量子コンピュータ、人工知能、ロボティクス、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、材料科学、ネットワーク、センサー、3Dプリンティング、AR、VR、ブロックチェーンなどだ。

注目すべきなのは、これまでバラバラに存在していた「エクスポネンシャル・テクノロジー」の波が融合しつつあるという事実だ。

 

レイ・カーツワイルが「収穫加速の法則」に従って計算したところ、我々はこれからの100年で、2万年分の技術変化を経験することになるという。つまりこれからの1世紀で、農業の誕生からインターネットの誕生までを2度繰り返すくらいの変化が起きるのだ。

 

量子コンピューティングの可能性

2002年、初期の量子コンピュータ会社、Dウェーブ創業者のジョルディ・ローズは「ローズ」の法則を提唱した。ムーアの法則の量子版で、量子コンピュータの量子ビット数は毎年倍増するという。ローズの法則は「ムーアの法則の強化版」と言われる。重ね合わせの量子ビットの性能は、トランジスタのバイナリビットとは比較にならないからだ。

 

例えば50量子ビットのコンピュータは、16ペタバイト(1テラバイトの1000倍)のメモリを持つ。iPodにこれだけのメモリがあれば、5000万曲を保存できる。だがこれを30量子ビット増やすだけで、全く次元の違う話になる。宇宙すべての原子が1ビットの情報を保持するとした場合、80量子ビットのコンピュータは、宇宙のすべての原子のストレージ能力を上回る情報を保持できることになる。

こうした理由から、量子コンピューティング技術が成熟したらどんなイノベーションが起こるか、まともに想像することすら難しい。

 

加速を「加速」させる7つの力

変化は加速する一方だ。変化が加速するのは、次の3つの増幅要因が重なっているからだ。

  1. コンピューティング能力のエクスポネンシャルな成長
  2. 加速するテクノロジー同士のコンバージェンス
  3. 7つの推進力の存在

 

個別にみれば融合するエクスポネンシャル・テクノロジーの副次的効果が、イノベーションを加速させる追加要因となっている。それぞれの推進力は個別に作用するが、組み合わさった時に最大の力を発揮する。

 

①時間の節約

「時間の節約」は多くのテクノロジーに共通する、重要なメリットの1つだ。イノベーションが生まれるには自由な時間が必要だ。テクノロジーはイノベーションを生み出すまでの時間を短縮する一方、イノベーターがそれを生み出すために使える時間を増やした。

 

②潤沢な資金

今ほどイノベーターが容易に資金を入手できる時代はなかった。この潤沢な資金が、さらに多くのイノベーションを支える。

 

③非収益化

かつては極端に資金力のある企業や主要国の政府系研究機関しか使えなかったツールが、今ではタダに近いコストで誰でも使えるようになった。非収益化のおかげで、企業の基本的ニーズ、すなわち電力、教育、製造、輸送、通信、保険、そして労働力のコストは劇的に低下している。

 

④「天才」の発掘しやすさ

今日世界がハイパーコネクテッド化したことで、圧倒的天才が階級、出身国、文化の犠牲者にならずにすむようになった。相互接続性の向上とネットワークの爆発的拡大のおかげで、天才を発見する妨げとなる壁は次々と崩れ始めている。

 

⑤潤沢なコミュニケーション

ネットワークは、人と人をつなぎ、アイデアの交流を促し、発明を後押しする。都市が人類史上最高の変化の推進力となった理由が、ネットワークとしての規模、密度、流動性にあるのだとすれば、地球全体がまもなく単一のネットワークとしてつながるという事実は、ほんの数年後には地球全体が市場最大のイノベーションの培養装置になることを意味する。

 

⑥新たなビジネスモデル

かつてはテクノロジーレベルで加速、融合が起きていたのが、今では市場そのものが加速し、融合している。新たなビジネスモデルのいずれもスピードと機敏さを高めるようにできている。

 

⑦寿命を延ばす

健康寿命を延ばすというのは、能力がピークに達し、社会に最も貢献ができる状態で活動できる年数を伸ばすという意味だ。

 

こうした、未知の領域を切り拓いていくための唯一の方法は、常に継続的に学び続けることである。