「副業」ではなく「複業」
「副業」というと、正社員で残業代わりに他の会社でアルバイトをするというイメージがある。「ふくぎょう」は主も副もなく、その時々に応じて臨機応変に、「主」にも「副」にもなる自分の武器というもの。正社員として会社で働くのも、アルバイトとして会社で働くのも、どちらも「給与収入」である。給与収入を2つ重ねて働いても、それは時間×労働単価に過ぎず、労働時間が延びるだけに過ぎない。
これからは一つの仕事が立ちゆかなくなった時、どの仕事が「主」になってもいように、仕事を組み立てていく必要がある。「複業」は、いくつかの仕事を同時にこなしていくから、その業種や組み合わせ方が大事になる。給与収入の仕事を複数するのではなく、給与収入と事業収入を組み合わせていく。つまり、会社に雇われて給料をもらう働き方と、起業してその事業で収入を得る働き方を組み合わせる。さらにそれぞれの仕事に重なる部分があると、1つの仕事で得たスキルや情報などを、他の仕事に生かしやすくなる。
「複業」に重要な5つの視点
「複業」はその人の夢や業種などで向き・不向きがある。「複業」を考える時には、次の5つの視点で自分にできそうかを考えるといい。
①形から入らず、小さく産み徐々に成長することを楽しめるか
起業というと大げさに考える人が多いが、個人事業主の代表なら明日からでもできる。雑誌の挿絵を毎月2万円で描く仕事があったとして、1年間で売上24万円。これも立派な事業収入として成り立つ。毎月フリーマーケットで出店して売上がたてば立派な事業収入である。
「複業」をするには、異なる収入を組み合わせる必要があるので、起業することが欠かせない。まずは自分がその事業経営に向いているかを試すためにも、ランニングコストを意識して、小さく起業するといい。
②他の収入源を「複業を支えるパトロン」ととらえることができるか
会社員として勤めていたら、その仕事が事業のパトロンである。配偶者など、他の人が生活の主軸を支えてくれるのであれば、それが事業の立派なパトロンである。配偶者など、生活の柱を自分以外に持っている人は、起業のチャンスである。事業が安定せず、うまくいかなかったとしても、家族が路頭に迷うこともない。家族や周りの方にはむしろ迷惑をかけることを前提として、どしどし協力をお願いするべきである。
③時間を好んで有効活用できるか
「複業」する時は、時給の仕事(給与収入の仕事)と時給に関わらない仕事(事業収入の仕事)を組み合わせることが大事である。時給に関わらない仕事ということは、時に時給に換算すると最低賃金にも満たない場合だってある。でも、その仕事を積み重ねていくことで、時給以上の報酬をもたらす可能性もある。それにやりがいを感じ、苦にならない人は、複数の仕事を持っても生き生きと働くことができる。そうしていく内に、自分で時間やスケジュールをコントロールしながら自分の都合で休みを確保し、仕事とプライベートのメリハリをつけていくという器量ができてくる。
④お金を有効活用するセンスを磨けるか
給与収入だけの内から自分で確定申告をするといい。自分のお給料がどのように税金として使われ、それが住民税に繋がっていくのかを知ることは、事業をするしないに関わらず大切なこと。これができるようになると、お金に振り回されず、逆に使いこなす能力を実践的に学ぶことができるようになる。
⑤その時々の状況に合わせて人生設計をすることが苦でないか
不安定な中に身を置きながらも今の状況を見極め、フットワーク軽く自分を変えていく力が、今後ますます必要になる。