感謝経済 他人の成功を支援する

発刊
2020年12月7日
ページ数
220ページ
読了目安
266分
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推薦者

資本主義とは異なる経済をつくることはできるか
日本最大のQ&Aソーシャルコミュニティ「OKWAVE」創業者が、「感謝」の価値をブロックチェーン技術によって評価して、資本主義とは異なる新たな経済をつくろうとする取り組みを語った一冊。

お金で測れない価値基準をつくる

人は、お金を稼いで、幸せになるための何かをしようと思う。しかし、それに集中するあまり、手段であるお金を稼ぐことが目的になってしまい、やがて幸せになることとお金を稼ぐことを同義であると、勘違いしてしまうことがある。

お金というのは、それを使う人間に対して純粋なモノを欲しがる気持ちを起こさせること以上に、お金そのものを欲しがらせるという傾向を持っている。お金は、モノの交換に使えるという役割から進んで、未来の安全性を貯めることができるようになった。お金が多ければ多いほど未来は安全だと感じる人々が、時々、過剰に安心を求めて貯蓄に走る時、世界恐慌が起こる。未来への無限の可能性をお金に託して、いつしか人はお金の奴隷になっているように見える。

 

このお金による欲望と不安を宇宙にまで拡大する前に、根本的にこの構造の改修をしておく必要がある。資本経済の外側に、これを捕捉し、改善する物差しを用意する。それが「感謝経済」、「感謝」という指標である。

お金を使って何かを買った時に、お店の人から「ありがとう」と言われたり、利用者からも「ありがとう」の声をかけ、相互に交わす笑顔。自分が何気なくしたことに対して「ありがとう」というお礼の言葉を言ったり、もらったりする、この心の温かさはお金の持つ価値だけでは測りきれない。

人の価値を測るためには、もちろん、お金という富をより多く積み上げた者が上という指標も必要であることは確かである。さらに、それを調整する上で、他の人に対して、どれだけ良いことをしたか、つまり「ありがとう」の言葉を受け取り、その質と量において判断されるべきであるというのが、お金の有無を補完する大切な価値基準である。その価値基準に則った新しい経済基盤が「感謝経済」である。「感謝経済」は他人の成功を支援することで、自分たちの生き方を豊かにしていくための仕組みを、自分たちで創ることができる経済である。

 

資本主義社会から「感謝経済」社会への移行は、現代において人間性を取り戻すための静かな革命である。ビジネスで大儲けすることは上手でない人でも、日頃から「ありがとう」を集められる行動さえ継続的に取っていれば、豊かに生きることができる社会を目指す。

 

感謝経済の仕組み

オウケイウェイブでは、2018年に「感謝経済」の最初のサービスをリリースしている。2020年時点では、誰かへの感謝の気持ちに対して「OK-チップ」と呼ぶトークンを贈ることができ、「OK-チップ」を使って「感謝経済」に賛同頂いた企業・団体が提供する優待と交換ができる仕組みになっている。オウケイウェイブでは、この「感謝経済」の仕組みに基づいて、様々なサービスを作ったり、展開しやすいようなシステム構造にした、新しい「感謝経済」プラットフォームの構築に向けた準備を進めている。

 

感謝しているからお金を払うというのは、確かに一理ある。しかし、それは多くの場合、プロの仕事に対する感謝ではないか。プロの仕事とは別の経済秩序が用意されていれば、従来の価値観ではアマチュアの仕事と言われるものに対しても、感謝を形にして届けることができる。つまり、「感謝経済」は、経済という仕組みの可能性を増幅・倍加させるものである。

 

「感謝経済」を普及させ円滑に回していくためには、その価値を流通させる手段として通貨のようなものが必要となる。現状の資本主義社会の価値観からは、ある程度距離を持ちつつも、うまく連携していく仕組みで動かす必要があるので、それは従来型の法定通貨と分けて考える必要がある。渡した側の「感謝」が具体的に記録として残らないからである。少なくとも当面の間は、ブロックチェーン技術で裏付けられた暗号資産として発行することになる。ブロックチェーンネットワークに感謝の記録を刻んで、世界で共有すれば、一気通貫で「感謝経済」の基盤として機能していく。

そして、「感謝経済」社会を真の意味で実現させるには、現在の経済秩序と並行して暗号資産だけでも満ち足りた暮らしを実現できるよう、経済環境を改めて整備し直さなければならない。