オンラインが前提のデジタルシフト
デジタルシフトにより、企業は従来以上の生産性を実現できる。また、デジタルへの変革が進めばオフィススペースに捉われないテレワークのような働き方も容易になる。
企業のデジタルシフトには、2つの世代がある。1世代目は、1990年代後半から起きた、PCの導入や文書作成のデジタル化だ。Officeを活用して資料を作成し、電話やFAXでなくメールを利用し、帳簿をデータベース化するなど、従来、紙ベースで行なっていた業務をシステム化していた時代である。
2世代目の、2010年代後半から起きているデジタルシフトは、オンラインを前提としたビジネスツールで情報を共有し、常時コミュニケーションを取りながら仕事を進める方法への転換だ。GoogleのWorkspaceやMicrosoftのTeamsのようなグループウェア、Zoomのようなビデオ会議、Slackのようなチャットアプリが主役となる。
1世代目のデジタルシフトでは、企業の主業務がデジタル化された。顧客管理システムや営業システムが、多くの企業で稼働している。対して2世代目のデジタルシフトでは、会議や社内外のコミュニケーションなど、組織として事業をするために欠かせない業務が対象となる。今のデジタルシフトは、オンラインを前提とすることで、業務のやり方を全く異なるものに変えてしまう。これに取り組むには、オンライン環境を当たり前に捉えて「オンラインで働く」感覚が大切になる。
オンラインで働くとは
「オンラインで働く」とは、業務の目的を捉え直し、デジタルツールを前提に手段を再構築することでもある。例えば、情報共有が目的の会議は、情報をまとめた文書をGoogleドキュメントなどで共有することでもいい。また、十分に議論を重ねてきた提案の承認は、皆が集まる必要はなく、Slackなどを利用したチャットでも行える。業務の目的をデジタルで達成する手段を考えていくと、従来とは異なるが、時間や作業量を大幅に節約して目的を達成できる方法が見つかる。このことは、生産性の大幅な向上につながる。
会議をビデオ会議で行うと、物理的な制約がなく、スケジュールが合えばオンラインで集合し、人数もほぼ意識する必要がなくなる。ビデオ会議が前提になれば、資料の共有方法や議事録の取り方も変わってくる。資料はデジタル化する必要があるが、Office文書やPDFで共有するよりも、Googleドキュメントのような文書共有ツールを使うことを推奨する。議事録もGoogleドキュメントを利用すれば、リアルタイムに参加者と共有しながら議事録を取れるようになる。
ビデオ会議を中心とした情報共有や意思決定のやり方に慣れてくると、ビデオ会議自体の重要性は次第に下がり、時間を短くしたり頻度を下げたりできるようになる。会議の前に資料を共有していれば、事前に全員が読んだ上で、簡単な議論や質問の受付をSlackで行うことも可能だ。意見のすり合わせもSlackでできる。
非同期コミュニケーションで業務を超並列で進めることができる
ビデオ会議からチャット中心にすることで、働き方は大きく変化する。オフラインの会議やビデオ会議は、全員で同じ時間を共有するが、これを「同期型」コミュニケーションという。対して、チャットなど、同じ時間を共有する必要がないものは「非同期型」コミュニケーションという。やり取りに時間を要する場合もあるが、各々が自由に時間を使えることが利点だ。
会議をオンライン化することのゴールは、情報共有や意思決定の手段を、同期型から非同期型に変えることだ。非同期化によって、働く時間の自由度を飛躍的に高められる。
オンラインでSlackやGoogleドキュメントを利用して仕事を進めていれば、すべての部下を待たせない。Aの会議に参加しながらBやCの情報共有を受けたり、Slackで承認や指示、意見交換などができる。会議自体も「超並列」化できる。開始前に資料を確認して質問を書き込んでおくことで時短でき、会議の中で重要なポイントも把握できる。いくつもの業務に、限りなく「待ち時間ゼロ」で対応できてしまう。