ダントツ経営―コマツが目指す「日本国籍グローバル企業」

発刊
2011年4月9日
ページ数
229ページ
読了目安
315分
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コマツ式のグローバル経営を知る本
売上の7割を新興国市場で稼ぐ建設機械メーカーのコマツ会長が、グローバル企業に必要な経営とは何かを説く。右肩上がりの前提にできない環境でいかにコマツは成長してきたか、実際に行われている施策が書かれている。

コマツ式グローバル経営

①経営も現地に任せる。

現地に未着した人が代理店を経営することで、その土地の情報が集まる。また、経営に関しても現地に任せるのが基本方針になっている。

②「流通在庫ゼロ」の仕組み

代理店が在庫を持てば、運転資金が膨らみ、収益を圧迫する。そして代理店が在庫を抱えすぎると値崩れを起こす。メーカーにとっても在庫の量が把握できない。
流通在庫ゼロにするにあたっては、ICT(情報通信技術)システムを在庫ゼロを前提に設計し、前線の販売動向を瞬時に把握できるようにしている。

③市場を「見える化」する。

建設機械の1台1台に「コムトラックス」というシステムを標準装備させている。GPSやエンジンコントローラー等の通信機能が付いており、機械の稼働状況を把握している。現場で機械がどの程度稼働しているのかを把握することで、需要の先行きが予測できる。

④基幹部品は国内集中生産

生産は「需要のあるところでつくる」が原則。但し、基幹部品は国内で集中生産している。生産と開発の現場を近くに置いて、毎日顔を合わせて仕事させることで、軽量化のようなイノベーションを実現させている。

「ダントツ商品」の開発

平均点主義をやめて、得意分野を伸ばす。そのためにはまず「何を犠牲にするか」を営業と開発に合意させる。性能とコストはトレードオフの関係になる場合があり、どちらも成立させようとすると突き抜けた商品は出てこない。

「ダントツ商品」として認定されるには、次の条件を満たす必要がある。
①重要なスペックや性能で、競合が数年かかっても追いつけない特徴を持つ。
②従来製品に比べ、原価を10%以上下げて、コスト余力をダントツ実現に使う。
③「環境」「安全性」「ICT」をキーワードとする。

原価を10%削減するには、開発と生産が早い段階で協業する必要があり、お互いの距離が近くなくてはならない。距離が近くないとイノベーションが生まれにくい。

「ダントツ商品」として生まれた代表例にはハイブリッド建機がある。燃費向上により、長時間機械を稼働させる中国では、価格が高くても人気商品となっている。

コマツの経営の基本

①取締役会を活性化すること
②社員とのコミュニケーションを率先垂範すること
③ビジネス社会のルールを遵守すること
④決してリスクの処理を先送りしないこと
⑤常に後継者育成を考えること

最近は社内公用語を英語にするという企業があるが、本当にグローバル企業として成功するためには、価値観や行動様式の共有が最も大切である。