NOKIA 復活の軌跡

発刊
2019年7月4日
ページ数
430ページ
読了目安
661分
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推薦者

どのようにしてノキアは倒産の危機を脱することができたのか
携帯電話市場シェアの過半数を占めていたが、iPhoneとAndroid端末によって、市場を奪われ、倒産の危機に瀕したノキアがどのように復活したのか。本業を転換し、業績をV時回復させたノキア会長が書いたリアルな経営の物語。

フィンランドのアイデンティティ

2008年当時、ノキアは世界のスマートフォン市場の過半数を占め、携帯電話業界の中で世界トップの座にあった。2000年には、ノキアはフィンランドのGDPの4%、輸出高の1/5を占めるまでになる。ノキアが生み出す利益は、他のフィンランド企業の利益をすべて足し合わせた金額に匹敵した。

アップルが2007年6月に「iPhone」を発売し、かつてのノキアのように成功していったのに対し、ノキアはアップルのタッチスクリーン式スマートフォンと競い合える体制になかった。技術力に問題があったわけではない。ノキア製スマートフォンはiPhoneよりも機能が豊富で、ピカピカのケースに収められ、シャツのポケットにすっと差し込め、頑丈だった。技術的な課題であれば、ノキアは苦もなく解決できたはずだった。ところが、そうはならず、好機が次々と見逃された。

競争環境の変化を見落とす

1990年代は、どのデバイスでもソフトウェアの割合は非常に小さく、ハードウェアが主戦場となっていた。2006年までに、ノキアは年間12種類のスマートフォン専用OSシンビアン搭載デバイスを導入していたが、その多くが新モデルごとに独自のソフトウェアを使ってカスタマイズされていた。その結果、イライラするほど重複だらけで、どこに独自性があるかも曖昧で、全体的に混乱をきたしていた。

2008年7月になると、Windows Mobile、iOS、Androidなど、競合OSが登場していた。これに対してシンビアンOSは使い勝手の悪さで知られていた。スマートフォン時代になって、OSというプラットフォームが競争力を規定するようになっていたのに、ノキアはOSをモバイル世界の主ではなく、デバイスの奴隷だと考えていた。

成功の毒性

2008年第4四半期の売上は予測を29%下回り、前年同期比でも27%減と大きく落ち込んだ。影響は流通チャネルに至るまですべてに波及した。工場は、需要を見込んでデバイスを量産し、出荷していた。売上の読みがはずれると、流通チャネルは在庫品で目詰まりする。古いデバイスが動き出すまで、誰も新しいデバイスを注文せず、製造現場がストップする。

市場が変化すると、大抵その変化は過小評価される。最終的にいくつかの手を打つが、その都度、以前よりも厳しい状況になっていく。

2008年時点では、致命的なトラブルに陥っているとは見えなかった。過去の大成功に悩まされる企業は間違いを認められず、向き合うことができない。最も必要なことは、成功における4つの毒性の兆候を認識することだ。

①悪いニュースが自分やチームの元に届かない
②自分のチームが悪いニュースや厳しい現実を詳しく調べない
③意思決定したことが絶えず延期され、骨抜きになっている
④1つのプランのみで、代替案がないことが多い

パラノイア楽観主義になる

どのような負け方をしそうか理解するよりも、勝つ方法を取り上げた方が常に魅力的である。ノキアは、いかに成功させるかを考えることに98%の時間を費やし、代替シナリオを通して考えることに時間をかけなかった。

成功には毒性があり、過去の測定基準を使うことで満足するようそそのかす。本当の現実を見るためには、パラノイアのように疑い深くなることで、自分のアンテナと自分がリードする人々のアンテナを研ぎ澄ますのが良い方法だ。

パラノイア楽観主義とは、用心深さと健全なレベルの現実的な恐怖心と、シナリオベースの思考で表される前向きで先見性のある展望とが組み合わさったものだ。最悪の場合にどんな結果になるかを予見し、それらを防ぐ方法を考える。自分のシナリオを常にテストして検証することが好調な時ほど大切である。