ビジネスZEN入門

発刊
2016年10月21日
ページ数
208ページ
読了目安
245分
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推薦者

禅の本質とは何か
禅の本質とは何か。近年、多くのビジネス界のリーダーに注目されている禅の教えを紹介している一冊。

仏教の本質は得ることではなく失うこと

仏教を信じたからといって、すぐに何かが得られるわけではない。仏教、特に禅の教えは何かを得るための手段ではない。むしろ、失うためのものである。

1つの食べ物にしても、それが好きな人もいれば嫌いな人もいる。好きや嫌いといった嗜好は、生まれた当初はなかったはずである。しかし、生きて色々な経験を積むうちに自然とそうした気持ちが生まれてくる。また、知識や分別といったものが身についてくることによって、いろんな判断を下すようになる。生きる中で身につけてきたそれらのものによって、人間はだんだんと物事を素直に捉えられなくなる。

禅の世界には「童心是れ祖心に通ず」という言葉がある。祖心というのは、仏教の本質を見抜かれた素晴らしい老師方の心。それが「童心」、子供の心と同じであると。即ち、子供の心のように何にもとらわれることなく、何事をもあるがままに受け取ることこそが肝要である、生きていく過程で自然と身についてしまった知識や分別などを削いでいくことで「童心」に近づこう、というのが仏教の考え方である。

捨てることで本質に目を向ける

何かを得ようとするのではなく、むしろ今まで積んできたものを崩していくこと。つまり、仏教が目指すのは「ゲイン」ではなく「ルーズ」である。そのために経を唱えたり、護摩を焚いたり、坐禅をするのである。

失うとは、余計なものを削ぎ落とすことである。そうすることで、最も大切な本質に目を向けるということである。

一時の損得で禅を捉えない

禅の核にあるものを一言で言えば「実践」である。ただ単に知識を得るだけではなく、とにかく実践を重んじるところが、禅がビジネスマンやリーダーの人に受け入れられる大きな要素である。但し、禅はすぐに目に見える利益を与えてくれるものではない。だからもし、ピンポイントで即効性のあるゲインを求めたいのであれば、禅は役に立たない。一方、禅はすぐに役立たないと言っても、禅の考えを知り、それを日々実践し、長期的な視野で利他の心を持って物事を考えれば、いつか必ず、自分に返ってくる時が来る。

「法輪転じて食輪転ず、食輪転じて法輪転ぜず」。物事は車輪のようになっている。例えば車がお寺だとすると「法輪」とは、しっかりと仏法を伝えること、正しい教えを実践すること。それをしっかりやっていけば「食輪」、即ち衣食住は後から勝手についてくる。しかし、まず衣食住のことを頑張ろう、即ち贅沢したり、いいものを食べたいという方だけに力を入れても法輪は転じない。本来やるべきことがしっかりしていなければ、お寺は動かない。

禅の本質

禅の本質は「不立文字、教外別伝」という言葉で表される。「不立文字」とは、文字や言葉ではなく、実際の体験によってこそ釈迦の本当の教えを体得できるということ。「教外別伝」とは、仏教の教えを弟子に伝える時には、経典の文字や言葉によるのではなく、心から心へ、その人の全人格とともに伝えられなければならないということ。

禅では、文字で書かれたものは解釈次第で変わってしまうため、言葉によって仏教の本質を伝えるのは難しいと考える。だから、文字や言葉ではなく、体験によって悟りを目指す。そしてその経験を人から人へと伝えていかねばならないとする。

実践してみることが大切

私たちは、知識や体験があると、こうに決まっている、こっちの方が効率的だ、こんなことできないに決まっていると思い込んでしまいがちである。しかし、実際にやってみると案外できる。重要なのは、「まずやる」ということ。その体験を繰り返し、まず実践する習慣を身につけること。そういう姿勢ですべてのものに向き合うのである。頭で考えて終えるのではなく、実践する。一見意味がないように思えることの背後には、そのような教えが隠されている。