未来を予測することは備える事である
限界はあるにしても、未来を予測するのは可能だ。予言ではない。今後、我々の未来、つまり、個人及び共同体の未来の主要な部分は、論理と直感を駆使する極めて特殊な思考法を用いれば予測できるだろう。
未来を「知ろうとする」または未来を「予言しようとする」のは、諦めることに等しい。未来を予測しようとするのは備える事であり、望むのであれば自由に生きる事、つまり「自分自身になる」事なのだ。「自分自身になる」は、自分が願う自己になる事だ。
自分の運命に働きかける事ができると考える者は、まず自分を待ち受けるだろう未来を把握する必要がある。それは、必要なら運命の流れを変えるためであり、自分が望む軌道に未来を近づけるためだ。
怠惰は予見の最大の敵、予測は自由の最良の味方
自分が今どのような環境・状況にいるか、何が自分を脅かしており、今後もそれが続くのか、自己の日常的な決定がどんな長期的な影響を及ぼすのか、自己の計画及び自分のために育む計画は今どこまで進んでいるのか。これらを明らかにするには、毎日5分間で必要十分だ。
あらゆる未来のリストを作り、様々なシナリオを練って「未来の基盤」を書く。但し、筋の通った時系列的な物語形式で執筆しなければならない。その際に、最も可能性の高い仮説を選択するのである。まず「無色物語」と呼ぶ、最も可能性の高い未来像を書く。そして慎重を期すなら、そこにすべてのリスクが現実になった将来「暗黒物語」を付け加える。
自分と関わりのある事柄、つまり、自分自身、他者、企業、国、人類全体の未来について、様々な物語を書き、常に書き直す。
未来を予測するメソード
①予測範囲の選択をする今日、今週、今月、今年、今後10年、今後1世紀、それ以上。
②予測対象の未来分析を5つの段階に区分し、順番に従って体系的に分析する
1.懐古予測
予測対象において概ね変わらない要素を抽出する。それが過去にどう進化したか、脅威や急変に直面した時にどう対応したか、微弱な兆候に反応できたか。それらの分析から今度も続くに違いない、その予測対象が持つ一貫性を導き出す。
2.生命維持予測
予測対象の健康状態、生活様式、自己管理法に関する見解をまとめる。これには人口が含まれる。
3.環境予測
予測対象の運命に影響を及ぼすかもしれない関係者(人物、企業、国、環境)を分析する。そのために、まず予測対象の未来に何らかの影響を及ぼす可能性のある関係者のリストを、予測対象に焦点を当てながら作成する。逆に予測対象が影響を与える関係者リストも作成する。それらの関係者の予測される未来を、イノベーション、危機、病気、テロ行為、戦争など、関係者に影響を与えるであろう事象を研究する。
4.愛着予測
環境予測で重要性を見出した関係者が予測対象に対し、未来においてどのような態度を示すのかを明確にする。この作業によって予測対象の友好関係の力学を分析する。即ち、予測対象の友情、愛情、敵対関係、イノベーションを利用する能力、危機や暴力から身を守る能力、次世代を守る能力などだ。
5.投影予測
予測対象の人生の中で、わかっている、あるいは起きると思われる未来の出来事の分析。その際、未来と自分がそうありたいと願う姿を己に投影する。まず、私生活と仕事のスケジュールや人間関係から生じると予測される出来事のリストを作る。次に、そのリストに、予測する範囲の最終地点で、どんな自分自身になりたいのかを付け加える。