知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法

発刊
2020年10月21日
ページ数
264ページ
読了目安
347分
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知覚の質を高めるにはどうすればいいのか
思考の前提となる「知覚」を磨かなければ、創造力は生まれない。普段何気なく見ているものから、独自の解釈を引き出し、創造性を高めるためのベースとなる知覚力を磨くトレーニング方法を紹介している一冊。
絵画の観察を通して、知覚力を磨くトレーニング方法が書かれています。

知覚とは

知覚とは、自分を取り巻く世界の情報を、既存の知識と統合しながら解釈することである。眼から入った「グラスの像」それ自体では、まだ知覚と言えない。そのインプットが脳内にある既存の知識と結びつくことで「グラスに半分くらい水が入っている」あるいは「グラスは半分ほど空だ」という意味付けが生まれる。これが知覚である。

知覚の価値は、他人とは異なる意味付けにの中にある。知覚にはその人なりの独自性がある。他人と異なる解釈には常に創造性のポテンシャルがあり、これが知覚の持つ絶大な意義である。また、知覚は意思決定にも決定的な影響を与える。

 

知覚プロセスは「感覚器」と「脳」が関与する2ステップからなる。

  1. 受容:感覚器を通じて知覚情報を受容する
  2. 解釈:脳が既存の知識を組み込み、意味付けする

 

この解釈のベースには常に「知識」がある。「何を知っているか」が「どう意味付けるか」を規定するため、知覚は次の3つの特徴を持つ。

  1. 知覚は「多様性」に富む
  2. 知覚は「知識」と影響し合う
  3. 知覚から「知識」がはじまる

 

知覚は「コントロール」できない

人間の知的生産プロセスは次の3つのステージからなる。

  1. 知覚:人や資料などからの情報を選択し、解釈し、問題設定をする
  2. 思考:問題解決や意思決定といった一定のタスクを目的として、必要に応じて推論・分析的・論理的・クリティカル・クリエイティブ思考などを稼働させながら考える
  3. 実行:アイデアを組織化し、コミュニケーションやパフォーマンスを行う

 

知覚と思考の違いは「コントロール可能かどうか」ということ。思考は、ある程度コントロールできるが、インプットされた情報を既存の知識と統合し、意味を付与する知覚プロセスは、半自動的に進むので、それ自体は本人に制御できない。

 

知覚の「質」を高めるにはどうすればいいのか

知覚を磨くには、次の4つの改善アプローチが考えられる。

 

①「知識」を増やす

脳内に蓄積されている知識が多ければ多いほど、より幅広い解釈の可能性が見込める。この時に大切なのは、自分からかけ離れたものを学ぶだけでなく、異質なもの同士を「関連づける」という視点である。

 

②「他者」の知覚を取り入れる

経験や背景がまるで異なる人物に対してオープンになる。常に刺激的な知覚をシェアしてくれる「他者」に出会うのが難しい場合には、読書が有効である。

 

③知覚の「根拠」を問う

「なぜ自分はそのような意味付けをしたのか」を自問する。知覚のベースとなる知識はすべて正しいとは限らない。その知覚を生み出した根拠を検証し始めると、次々と新たな問いが湧いてくる。

 

④見る/観る方法を変える(観察する)

知覚への最大の影響力を持っているのは視覚である。従って、知覚の質を高めるには、まず自分の眼が「何を/いかに見るのか」をコントロールしていくのが、最も効率的である。見る/観る方法を変えるのが「観察」である。視覚が捉えたありのままの事実をよく観ることによって、「見えないものを観る力(眼で見えないものを脳で観る力)」が高まる。これを「マインドアイ」と呼ぶ。

マインドアイが観ているのは、既存知識と統合された解釈や、それをもとにした発想である。ただ受動的に見るのではなく、好奇心に導かれて視覚的刺激を集中的かつ能動的に受容しながら、脳を最大限に活性化させる「観察」という行為は、マインドアイ(アイデアを観る眼)の機能を高め、知的生産を後押しする。

 

絵画を観察することで知覚力をトレーニングする

観察の質を高め、知覚力を磨いていくために有効なのが「絵画の観察」である。「絵画観察トレーニング」は、米国イェール大学メディカルスクールで生まれた。絵画をよく観るだけで、私たちの「眼」のポテンシャルは十分に引き出されていく。

 

実際に絵画を観る時には、次の3つのポイントに注意する。

  1. 十分な観察時間
  2. 多くの解釈を生む眼のつけどころ
  3. 知覚を歪める要素の排除

 

「見ている」という感覚があっても、直ちに解釈が起こるとは限らない。「見えて当たり前」という過信を捨て、「しっかり観るためには時間と工夫が必要」という意識へと切り替えることが、私たちの知覚力アップには欠かせない。