たとえば、謙虚に愚直なことを継続するという習慣

発刊
2019年11月5日
ページ数
206ページ
読了目安
192分
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推薦者

経営を失敗しないための教訓
不動産業界史上最年少で上場を果たし、リーマンショックで破綻。どん底から再び、年商200億円の企業を創った著者の、二度と失敗しないための教訓の書。

お金の価値を考える

エスグラント破綻の直後に猛烈に後悔したことがある。それは、自分自身が楽しむためのお金の使い方をしていたということだ。接待、パーティー、仲間との時間、28歳で100億円近い資産と年収数億円という生活を手にし、自分でも気づかぬうちに浮かれていた。当時は、人の幸せのためにお金を使い、そして意義のある使い方をするという視点が欠如していた。

今は、強烈な体験から「倹約」という言葉が染み付いている。倹約とは、細かく経費を節約するのではなく、慎ましくお金の価値を精査して、使い方を取り決めるということ。お金の価値を考えるということは、物を買うことだけでなく、時間の使い方や仕事に対する考え方も変わってくる。

100年に一度と言われた大不況の中、価値が変わらないモノもあった。それは供給が限られているモノだった。東京都心駅近の物件で、特に単身者向けの物件は家賃と価格の値下がりも1%程度だった。人口が増え続け経済が成長している都市の物件は、当然ながら供給が限られているモノである。値段とは、その決まり方に同じ法則がある。

わかっているふりをしない

「知ったかぶり」をしないというのは、コミュニケーションする中で最も大切にしている。

過去の不動産投資において、最も大きな損失を出した千葉県のアウトレットモール買収は、「わかったふり」をしたことによる大失敗だった。元々のデベロッパーの投資を合わせると32億円もの資金を投じた物件が、最後に手放す時には0円だった。

始まりは、近くに大手デベロッパーによる大規模なモールが誕生したこともあり、テナントが次々と奪われてしまったことだった。でも、買収価格は開発費の1/4。テナントの家賃を下げて、しっかりとした運営をすれば経営を立て直せると、深く研究することもなく、経営計画を決めてしまった。ところが、テナントが戻ってくるどころか、さらに次々とテナントが出て行き、人口減少が加速している地域にあって客足は減っていくばかり。敷地面積は3万坪以上。地価が安い地域とは言え、固定資産税はとてつもない金額で、最後は税金が収入を上回る「逆ザヤ」となり、「タダなら引き取ってもいい」という行政に渡した。

顧客目線を忘れない

シーラが管理する物件は、99.8%以上の入居率を維持している。その秘訣は、とことん場所にこだわり、デザインにこだわり、利便性の良いマンションを創るということ。これが簡単なようでとても難しく、どうしても不動産屋は「売るべきもの」ではなく、「売らなくてはいけないもの」を売るという原理で動いてしまう。誰もが納得をする物件を売るというのは、簡単ではない。

売上を拡大することよりも、自分たちが欲しいと思える物件を創り続け、驚異の入居率を実現している。お客様には、投資してもらうオーナーと実際に賃貸で入居してもらう2種類がいる。投資効率と居住の快適性という両方のニーズを成立させなくてはならない。極限までコストとリターンを考え抜いた答えが、業界平均よりも1部屋97万円高くお金を掛けてマンションを創ることだった。

人への投資が一番儲かる

今まで投資した中で一番儲かったのは、株でも債権でも不動産でもなく、「人」への投資である。最初に起業したエスグラントが順調に成長していく中で、核になる幹部が必要と感じ、当初は次々に大手デベロッパーから引き抜いたベテランを迎え入れていた。しかし、ベテランは経験豊富で結果を出す反面、業者からのキックバックを受け取るなどの「不正行為」をすることもしばしばだった。そこで、上場、民事再生、現在のシーラの立ち上げに至るまでのパートナーとなった湯藤を抜擢し、ベテランの方々に辞めてもらった。

お金を掛けて社員をヘッドハンティングし、高い役職とサラリーを払うことは投資だが、愛情を持って、時間をかけて教育し、勇気を持って抜擢するということも、大切な投資である。

参考文献・紹介書籍