エゴを減らし、他者の幸せを願う時に幸せを感じられる
脳にはアクセルとブレーキに相当する部位がある。脳が何かに集中したり、一生懸命前向きに取り組んだりする時には脳のアクセル部分が活性化し、逆に立ち止まるような時は脳のブレーキ部分が活性化する。また、アクセルが活性化していると前向きになり、幸せを感じ、ブレーキが強くなりすぎると心が沈んだり、ネガティブなものの見方になったりしてしまう。
研究によれば、脳のアクセルの活性は「セルフレス」、つまり自分のことより他者の幸せを願っている状態の時に高まることがわかった。セルフレスな状態というのは、脳全体をバランスよく使えている状態である。「エゴ」が強いと、脳の回路は分断され、バランスを崩してしまう。幸せに生きるためには、エゴを少なくし、脳全体をバランスよく使うことが大事である
脳全体をうまく使うための1つの鍵となるのは、脳の「島皮質」という部位である。島皮質はこれまであまり研究が進んでいなかったが、最近になって、この島皮質を鍛え、脳全体をバランスよく協調的に働かせることが、その人の人生を豊かに幸せにすると科学的にわかってきた。
島皮質が担当する分野はかなり幅広く、社会的感情、道徳的直感、共感、音楽への感情的な反応、依存、痛み、ユーモア、他社の表情への反応、購買の判断、食の好みなどに関わる。最も大きな特徴は脳のハブ(中継地点)のような役割をしている点である。自分の外側から来る感覚と内側の感覚を繋ぐ、他人の気持ちと自分の気持ちを繋げる。この働きによって、私たちは他者のことを理解したり、他者に共感したりすることができる。つまり、この島皮質の機能を高めれば、他の人と心の繋がりを持ちやすくなり、例えどんな過去を持っていようと、過去の自分を受け入れやすくなる。
脳を磨く6つの方法
脳も筋肉と同じで、鍛えたい部分をよく使うことでその部分が強化される。島皮質を鍛えるには、島皮質に関する思考や感情、行動を意識的にできるだけ多く増やしていけばいい。
①感謝の気持ちを持つ
常に感謝の気持ちを抱くことは、脳機能を高め、脳を全体的に働かせることに役立ち、心と身体に様々なメリットをもたらす。但し、恩恵的感謝(ポジティブな成果を得たから感謝する)だけをしていると、エゴが強くなり、次第に気持ちが暗くなり、長期的には鬱傾向を強くする。そのため、恩恵的感謝も含む「普遍的感謝(感謝の気持ちをいつも感じている心のあり方)」をすることが大切である。
②前向きになる
脳は基本的にネガティブな刺激の方に強く反応してしまう。そのため、ネガティブバイアスのような脳の特性を知り、前向きになる脳の回路を普段から鍛えることが大切である。
- 過去の経験で気持ちが前向きになった時のことを思い出す
- 喜び、希望、誇りなどを感じてみる
- 自然と前向きになるポジティブな言葉がけをする
- 楽しむ
- 笑顔になる
- 自分から元気に挨拶して、言葉を発する時に活動する脳を鍛える
- 小さくても、できたことに目を向ける
- 小さな成功体験を積み、やる気を高める
- 小さくても成長に目を向ける
- ネガティブな感情の意味を受け止め、転換する
③気の合う仲間や家族と過ごす
温かみのある、心を1つにできる人間関係をずっと持ち続けられていることが、幸せで豊かな生活を送っている人の共通要素である。
④利他の心を持つ
利他とはセルフレス(私心がない)な状態である。利他の心を持っている人は、他者と心を1つにできるような関係を築きやすくなる。そして、同じ利他の行動でも共感に基づくものであることが重要である。
⑤マインドフルネス(脳トレ坐禅)を行う
マインドフルネスとは、今この瞬間に、余計な判断を加えずに、自分の人生がかかっているかのように真剣に意識して注意を向けること。あれこれ考えずに、ただただ自分の心と身体に向き合う時間を過ごすことで、集中とリラックスが共存する状態をつくる。
⑥Awe(オウ)体験をする
大自然や大宇宙の悠久さや広大さを前に、自分の存在の小ささを感じる体験を、脳科学ではAwe(オウ)体験という。Awe体験をするとエゴを少なくし、謙虚な気持ちを起こす。Awe体験をして、謙虚な気持ちになったり、世の中のため、人のためという利他の気持ちが強くなると、幸せに生きるための脳が活性化される。