大人になると成長が止まる理由
大人になっても、新たな課題に直面し、未経験のことをするよう要求され、今の能力以上に成長する必要に迫られた時には、演じることで乗り切ることができる。
人が成長や発達を止めてしまうのは、他人よりも「頭一つ分、背が高くなる」よう促す演技の場に参加しなくなるためである。大人から、既にやり方を知っている行動だけを期待されるような環境では、自分以外の人間を演じるリスクを取らなくなる。その代わりに、慣れたパターンを繰り返し、既に学習した居心地のいい役割を受動的に演じることになる。
演技することで能力を伸ばすことができる
人は大人になっても成長し、能力を伸ばすことが可能である。つまり、子供の頃にやっていた創造的な学習を再開し、発達過程の経験と能力を取り戻せばいい。そうすれば、新しいやり方で演技をし、新しいことを試せるようになり、人々や組織の足を引っ張っている使い古した台本から抜け出すことができる。訓練すれば、人は自分の演技を変えられる能力を持っている。これをパフォーマンス・ブレークスルー『壁を破る力』と呼ぶ。
パフォーマンスの5大原則
①成長を心に決める成長するには新しい演技を身につける他に、これまでずっとやってきた演技と向き合うことが重要になる。この徹底的な受容には勇気がいる。しかし、物事はこういうものだとか、自分はこれまでと変わることはないという先入観を疑うことが「壁を破る力」の1つとなる。
まず新しい役を演じること。自分以外の人についても、今まで考えもしなかった役割を担うチャンスを探すこと。成長する決意は、得意なことと不得意なことのどちらをするかで常に揺れ動くが、鍛えていない筋肉や弱みを新たな強みに変えることが大切である。
②どこでもアンサンブルをつくる
多様性のあるアンサンブル(共演者集団)を構築すれば、全員が何かを提供しつつ学ぶことが可能になる。新しいアイデアや、ともに話し働く新しい方法を生み出すための素材をもたらすのは、グループの多様性である。アンサンブル構築に参加すると、これまでと違った自己認識をする機会が得られる。自分よりも大きなものをつくる一端を担い、アンサンブルとしてともに演じれば、自分だけに目を奪われることがなくなる。
③耳を傾けて画期的な会話をする
アンサンブルがうまく機能するためには、メンバー同士で話し合いができる必要がある。しかし、会話には聞くことが不可欠で、ほとんどの人は聞くことがあまり得意ではない。アンサンブルのメンバーは、言葉や感情、仕草、言葉以外の音、意図といったオファーを聞き、発展させる。人間は常にオファーを発し、また受け取っている。しかしほとんどの人は、オファーにどう対処したらいいのかわからなくて不安なので、今までの行動を続けてしまう。しかし、聞き手を演じ、オファーを聞いて発展させる能力を身につければ、あらゆる可能性とチャンスが開ける。
④ゴミから創造する
成果偏重主義に染まると、成果に至る社会的・創造的プロセスを見失ってしまう。結果がどうであれ、人間のありふれた創造プロセスに注目し、称賛し、研究し、発展させ、探求することが必要である。人間は創造者として商品や文化を作っているが、それにはゴミも含まれる。ゆえにゴミからも創造できると気づくことである。
⑤人生を即興で演じる
人生において何かが起きる。この出来事を知覚し、そこから発展する形で反応する。こうした即興による行動は何十何百とあり、かつては新鮮だった。それがやがて日々の台本となる。学び、成長し、発達し続けたければ即興は欠かせない。即興のコツは次の6つ。
1.イエス、アンドで答える
2.相手をよく見せることに注意を払う
3.失敗を歓迎する
4.フォロワーをフォローして共同作業を生む
5.アクシデントを楽しむ