スノーピーク「楽しいまま! 」成長を続ける経営

発刊
2019年10月18日
ページ数
224ページ
読了目安
188分
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自分の好きなことでマーケットを創る
アウトドア用品メーカーのスノーピーク代表が、好きなことを経営に活かしてきた経験を語った一冊。自身が欲しいものをつくることで、新しいマーケットを創ることができると語っています。

キャンパーによるビジネス

スノーピークはハイエンドなアウトドア用品を手がけるメーカーだ。2018年12月期で売上120億円。東証1部に上場している。アウトドア用品の会社で上場しているところは世界的にもあまりない。またこの分野で毎年売上高が着実に伸びている会社もあまりない。

事業環境は激変しているが、大きな特徴は何ら変わりがない。それはアウトドアのビジネスの展開にあたって、顧客だけでなく社員もキャンパーであるという点だ。スノーピークでは、キャンパーとして製品を開発し、世界観をつくり、それをキャンパーとして顧客に丁寧に説明し、販売している。これがスノーピークのビジネススタイルだ。

「好きなことだけ」にこだわる

1986年当時、スノーピーク入社にあたって、2つのことを考えていた。

①新事業としてアウトドアに参入して、理想のブランドをつくること
当時、世の中にはおしゃれなキャンプを提供する会社がなかったから、「それならば自分で取り組もう」と発想し、オートキャンプの事業を立ち上げた。

②手がけていく製品やサービスは自分たちが心から欲しいものでなければならない
本当にいいと思うものだけにスノーピークのロゴマークを入れる。最終的に製品化するかどうかは、自分たちが欲しいかどうかを基準にしていて、「好きなことだけ!」にずっとこだわってきた。

オートキャンプは80年代後半から人気が高まり、スノーピークは急成長。5億円ほどだった売上高は90年代には約25億円にまで伸びた。その後、ブームが去り、6期連続で売上高が下落した。その時に何をすべきかを考え開発に力を注ぎ、無駄なことは全部やめた。この時期の取り組みがスノーピークの次の成長を導いた。

転機となったのは1998年からユーザーと社員が本音で語るイベント「スノーピークウェイ」を開催したことだ。初めてユーザーとじっくり話した成果が大きく、この時にユーザーからの意見を生かし経営改革を進めた。問屋を通さないで直接販売する形に切り替えたのもその1つで、流通マージンを抑えながらハイエンドな製品を安定した価格で提供できるようになった。スノーピークウェイはユーザーと社員が語り合う場として定着し、現在は全国で開催している。参加者はイベントに参加すればスノーピークのユーザー仲間に会える。回数を重ねるうちに、世代を超えたコミュニティになってきた。

スノーピークウェイを契機とした経営改革を経て、再び成長軌道に乗ったスノーピークは順調に業績を拡大。売上高は86年当時と比べ24倍ほどになった。

アフターサービスにも力を入れている。大きな特徴としてスノーピークはすべての製品に永久保証をつけている。素材の経年劣化などを除けば、製造上の欠陥が原因の場合、ユーザーは製品を無料で修理または交換できる。ユーザーにはすっかり定着していて、2018年は約1万件の修理があった。ここでも心がけているのはユーザー本位のサービスを提供することだ。

好きなことにフォーカスする

スノーピークのようなクリエイティブな企業にとっては、何よりも「好き」という気持ちが大切である。今の時代にクリエイティブなことをビジネス化する場合、好きなことにフォーカスした方が誰も事業化していない処女地を見つけやすいからだ。自分の内なる欲望、要求があるからこそ消費者として「こういう製品が欲しいけれどまだ誰も提供していない」と気づくし、好きであるがゆえにまだ誰も具現化していないカテゴリーを掘り当てられる。