Think Disruption アップルで学んだ「破壊的イノベーション」の再現性

発刊
2020年3月21日
ページ数
272ページ
読了目安
329分
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アップルはなぜイノベーションを生み出すことができるのか
かつてアップルの象徴的な広告となった「Think different」キャンペーンの日本責任者であった著者が、アップルの創造性の原動力とは何かを紹介している一冊。

レガシーを捨てる

スティーブ・ジョブズ率いるアップルがディスラプションを起こすにあたって、フレームワークなどは使っていない。拠り所となったのはスティーブの天才的な先見性と、Think differentに体現されるマインドセットだった。

ディスラプションの第一歩はレガシーを捨てること。レガシーとは、先人が築いた物理的、精神的遺産のことであり、企業活動においては「業界の慣習」「組織の慣習」「ビジネスモデル」など、あらゆるものが該当する。

倒産寸前だったアップルに復帰後、スティーブ・ジョブズが矢継ぎ早に行ったことはまさにレガシーを捨てることだった。新生アップルの創造のプロセスは、文字通り、すべてが破壊から始まった。

迷いと恐れを断ち切る

スティーブのディスラプションの核にあったのは、人間の無限の創造性をテクノロジーで増幅させることへの「オブセッション(究極の熱狂的こだわり)」である。

最高のものづくりを追求するオブセッションと、妥協や迎合は相容れない。人の「事情」や「都合」ばかりを考えていては、最高のアイデアは生まれない。また、ストレスや不安のないコンフォートゾーン(快適な空間)に革新は生まれない。何かを新しくすることや変化が起きることに人間は抵抗するものである。

最高のものを作るのは、失敗が許されるのか許されないのかという「作用される」側に立つのではなく、「作用する」者としての意志を持って不退転の覚悟で臨む姿勢が必要になる。

創造性を融合する3つのポイント

どのようにイノベーションに作用する者となって融合するのかには、3つのポイントがある。

①創造力とオブセッションを最大化する
スティーブは愛読した『イノベーションのジレンマ』の理論を参考にしたと思われるが、アップルのディスラプションは、本に書かれた原則とは異なった展開をした。理論通りになればiPhoneは成功しないという予測に反して、アップルは飛躍的な成長を遂げた。アップルの特殊性には、最高のものを作ることが何事にも優先するというオブセッションがあった。

②共感を広げて反対者を味方につける
イノベーションを語る時に「2-6-2の法則」がしばしば引き合いに出される。この法則によれば、優秀な人材を集めて組織を作っても、積極的で変革の推進力となるのは2割である。あとの6割はサポートする側に回るか抵抗勢力に回る。最後の2割は積極的な反対者に回る。アップルには昔から熱狂的な支持者がつくのが特徴だったが、一方で強烈なヘイター(敵)も生み出した。アップルのイノベーションでは、この抵抗勢力の克服の鍵とあったのもオブセッションだった。推進者が生み出す「最高のもの」は、誰も無視することはできず、人間を前進させる大義への共感となって人を動かす。

③フォーカスしてインパクトを極める
アップルが、イノベーションのジレンマの解決を可能にしたのは、優先順位を利益から転換し、徹底的に製品にフォーカスしたことである。アップルの優れたところとして、見た目のデザインと印象に目を奪われるが、スティーブのこだわりは最も小さいところに細やかに施されていて、ディスラプションは、ナノレベルで創造されていることがわかる。

この3つのポイントを意識して考え、行動すれば、常に完璧なディスラプターとして作用する側に立てるというほど簡単ではない。これら3つのポイントは、到達すべき姿として目指すべきだが、時折崩れそうになるバランスを補正して、バランスを取り戻したいときに立ち返る軸として考えるとよい。