スタンフォードの心理学授業 ハートフルネス

発刊
2020年10月22日
ページ数
344ページ
読了目安
392分
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精神的な豊かさを築いて生きる方法
スタンフォード大学で教鞭を執る心理学者が、自らの経験をもとに、生きる意味を見出し、他者との共感を輪を広げていく道を説く一冊。
精神的な豊かさを築き、他者とのつながりの中で自らを満たし、癒す生きるための考え方が書かれています。

ハートによって生きる

「忘」という漢字が気づかせるのは、自分が生きていることを思い出し、すべきことを忘れず、ハートによって生きるということである。私たちは学んできた教訓、年長者の教え、自分が最も生き生きとしていた時のことを忘れないようにすべきである。意味と調和、つながりと全体性を感じていた時のことを思い出せば、私たちは癒されるだろう。

 

洗練されたデジタル機器を手に入れ、多く使いこなして生活が進歩しようとも、人生の幸福に必要なものが得られるわけではない。意味ある人生はハートによる精神的なもので、思いやりと寛容さによって満たされる。

ハートフルネスによって私たちは、利益や快楽を追求し、物質至上主義へのこだわりや、そうした価値観や行動を疑いもしないような類のマインドフルネスの限界を、乗り越えようとする。ハートフルネスは、小さな自我を超えた大いなるものとつながることによって、目的を見いだすことに重きを置く。ハートフルな生き方は、他者の人生をより良くすることに意味を見いだす。

 

ハートフルであるとは、内なる沈黙と静けさによって、開かれたハートを育てること、自分とすべての存在に対してより人間らしく、思いやり深く、責任を持てるようになることである。自分自身との関係、家族との関係、仕事、さらに広い世界との関係に影響を与えるハートに耳を傾け、内なる声を聴く。

 

ハートフルネスは、人々と、自然界と、精神的な価値とつながることで、人生に根拠や、意味や、目的を見出そうとする願いを満たしてくれる。現実の中で行動することで自分と世界への責任を果たし、内なる世界と外の世界を1つに結びつける。コミュニティの中では自分たちの人間性の価値を認め、大切にしながら、自分の限界を超えることを願い、限界と超越の相互作用を進める。そしてハートとのつながりを深め、コンパッション(ともに感じること)の輪を広げ、人にすべきことを行っていく。

 

ハートフルネスを育てる8つの道

①初心

癒しに欠かせないのは、私たちをマインドフルな状態に導く「初心」である。初心は治癒と語源を共有する好奇心から発する。そこから、大切な相手に注意を向ければ、コンパッションによる癒しの可能性に接近できる。

 

②ヴァルネラビリティ(開かれた弱さ)

世界を受け入れ、他者を認める畏敬の心を持つ時、私たちはハートフルネスを体験する。自分の恐れに直面する時、私たちは依存しながらつながり合う世界に対して丸腰で立つ存在として、自分のやさしさや人生の傷つきやすさを感じることができる。決めつけやナラティブを超えて人生をありのままに感じれば、苦しみは和らぐ。

謙虚さは他者との関係性に影響を与える。謙虚になれば、人を同じ人間として尊重できる。謙虚であれば、人の人生経験に耳を傾け、豊かさを受け取れることがわかる。すべてが持つヴァリネらビリティを大切にすれば、人間存在の「不完全さの美」に目を向け、噛みしめる「わびさび」の感性を含んだハートフルなスペースが生まれる。

 

③真実性

一人ひとりにはなすべき役割があり、他人には取って代われない目的がある。自分自身であることが必要である。誰にもその人だけの持ち味がある。真の自分を受け入れ重んじれば、私たちは生き生きとして、本当の目的がわかり、精一杯意味深い人生を生き、すべきことをするようになる。

 

④つながり

私たちは、自分の心に存在する居心地の悪い「他者性」を認めることで人を受け入れる。人を外だけではなく、内なる存在としても認識する。自分の中に人を意識すれば、つながるための方法もわかってくる。そうして広がる思いやりの輪には、多くの人、生物、宇宙全体が含まれていく。

 

⑤深く聴くこと

敬意をもって聴き、相手に注目する時、ストーリーをギフトとして受け取ることができる。私たちは人のストーリーによって癒されることもある。人が希望を見つける手伝いをしながら、自分の希望を見つけることもできる。

 

⑥受容

現実をそのまま受け入れることと、より良い方向へ変えるべく行動することのバランスを見つけるのがハートフルネスである。人生は、意志の力ではいかんともし難いことばかりだと教える。受容は自分と人へのやさしさを生み出し、責任ある行動によって私たちを蘇らせる。

 

⑦感謝

感謝を感じる体験は、そこから起こす行動と合わせて、社会的な関係性をつくり、それを強化する。どれだけ受け取ったかを考えれば、自分が愛され大切にされている感情が生まれ、頂いた相手やその他の人たちにもお返ししようとする動機が生まれる。感謝の気持ちを伝えることによって、人とのつながりはより強まる。

 

⑧奉仕

誰にも自分を超えた何かをよりどころにする気持ちがある。私たちは自分が選んだ何かに価値を認め、それに身を捧げることで、人生に意味を見いだす。

参考文献・紹介書籍