ワークマン式「しない経営」 4000億円の空白市場を切り拓いた秘密

発刊
2020年10月21日
ページ数
288ページ
読了目安
331分
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新規事業を成功させるための秘訣
作業服専門店「ワークマン」の急成長を仕掛けた著者が、ワークマンの経営とマーケティングを解説している一冊。どのようにすれば、新しい市場を開拓できるのか。その戦略のプロセスや戦略を実行に移すための企業風土改革の施策が書かれています。

成長の限界を打破する2つの改革

ワークマンは作業服というブルーオーシャン市場に過剰適応し、身動きが取れなくなっていた。1つの分野、狭い業態で30年以上やってきた人たちは、なかなか別の将来を考えようとしない。成功して安定し、2位との差が大きいと前例踏襲となる。小さな市場を深掘りする力は圧倒的に強かったワークマンだが、成長の限界ははっきり見えていた。そこで、次の2つの改革を行った。

  • ブルーオーシャン市場の拡張(客層の拡大)戦略
  • 「しない経営」のバージョンアップと「エクセル経営」による企業風土の改革

 

自社の強みを最大限に活かしながら、新しい市場でのポジション、新しいマーケティング手法、最適なオペレーション手法という観点でワークマンの経営スタイルを見直した。その結果、2018年9月に誕生したのが「ワークマンプラス」である。

 

ブルーオーシャン市場の拡張

ワークマンの店舗はいずれも100坪の標準店舗で、そこで作業服や作業用品1700アイテムを取り扱ってきた。そこから派手めで一般の人もアウトドア、スポーツ、防水ウェアとして使える320アイテムをワークマンプラス用に選んだ。
そして、見せ方を変えた。作業系の製品は機能の良さで売れていて、デザインで買う人はあまりいなかった。しかし、一般客の場合、デザインが重要なので、きちんと見てもらえるようにした。

横軸にデザイン性重視と機能性重視、縦軸に高価格と低価格で分けると、「機能性×低価格」に巨大市場が見つかった。

 

ワークマンプラスの出店までのプロセスには次のような流れがあった。

①自社の強みを見つける

②なければ、強みを育てる

企業が新しいジャンプアップを図る時に大切なのは、飛躍した発想をしないことだ。地道に自社の強みや風土を分析し、地に足のついた着実な変革をする。自社が誰に、どのような価値を提供してきたか。誰が、どのように価値に対してお金を払ってくれたのか。それを確認することが重要だ。

競争力には3つの根源がある。

  • 製品力(差別化された製品)
  • 顧客関係力(固定客の囲い込み)
  • 運営力(現場の改善力、低コスト運営)

ワークマンの場合は、運営力の強い会社が製品力を強化することを考えた。そのためにPB製品に力を入れた。

 

③進出市場を選定する

④市場を細分化してみる

作業服市場とアウトドアウェア市場は共通する「機能性ウェア」というカテゴリーを持っていて極めて近いし、作業服のスタイリッシュ化が進んだことで同一市場化が進んでいるように見えた。低価格ゾーンは魅力は少ないが、徹底的にやり切ると競争相手がいなくなる。それには経営者が「しない経営」を極める覚悟で、余計なことを全部やめ、低下価格のみを追求する必要がある。

新製品やビジネスモデルのヒントを得る時に有効なのが、異常値を検知することだ。通常のデータとはかけ離れたものを見つけたら、じっくり観察してみる。製品開発なら、通常は絶対に来ないお客様がいないか、通常とは全く異なる使い方をしていないかを探す。自社製品の使用法を、ターゲットとは考えていなかった一般のお客様に教わった。

 

⑤社員のやる気を引き出す

⑥小規模でテスト参入する

⑦問題なければ本格的に参入する

 

「しない経営」

ブルーオーシャン市場の拡張戦略を練ることは誰にでもできる。この時重要なのは「しない経営」で企画をつくることだ。「目標は少なく」「人をかけない」「お金をかけない」「期限を定めない」の4つの「しない」でスタートし、目標を達成するまでやり切る。人とお金はかけずに、企画と準備に時間をかけるのだ。

いくら戦略マップを精密に描こうとも、全社員の賛同が得られなければ、結果を出すことはできない。そこで企業風土を変えることが重要になる。1つは「エクセル経営」を実行し、社員全員がエクセルのデータを活用し、経営に参画すること。もう1つは「しない経営」をさらに進化させ浸透させることだ。

 

①社員のストレスになることはしない:ノルマや短期目標は設定しない

②ワークマンらしくないことはしない:アパレル業の戦略はマネしない、デザインは変えない、顧客管理はしない

③価値を生まない無駄なことはしない:経営者や幹部が思いつきでアイデアを口にしない