アリババ 世界最強のスマートビジネス

発刊
2019年10月30日
ページ数
388ページ
読了目安
633分
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アリババのビジネスの本質
中国からインドにも急速に広がっているアリババのビジネスの本質とは何か。アリババの前最高戦略責任者が、アリババの競争優位性を解説している一冊。

アリババは中国版アマゾンではない

今日、アリババは世界最大のリテール・コマース会社となった。中国のプラットフォームでは1000万社以上がアクティブな出店者として営業し、4億人を超えるアクティブバイヤーと取引する。中国で運営する小売市場の流通総額の合計は0.5兆ドルを超える。

アリババが中国版アマゾンだという認識は誤っている。アマゾンと異なり、アリババは伝統的な意味での小売業ですらない。仕入れもしなければ在庫も持たず、配送は外部のサービスプロバイダーが担っている。

アリババは小売業にかかわる全ての機能を果たすために、出店者、マーケティング会社、サービスプロバイダー、配送会社、メーカーからなるオンライン上の大規模でデータドリブンなネットワークを調整する会社だ。つまり、アメリカでアマゾン、イーベイ、ペイパル、グーグル、フェデックス、あらゆる卸売会社、メーカーが果たしている機能、さらに金融の機能の一部を加えたものを担っている。テクノロジーを活用して、中国の何千という企業の活動を調整し、これまでとは全く異なるインターネット時代ならではのビジネス・エコシステムを構築している。

アリババのスマートビジネスとは

新たなテクノロジーを使って必要なプレーヤーをすべて結び、産業のあり方を変える戦略を「スマートビジネス」と呼んでいる。アリババのようなスマートビジネスはテクノロジーを使い、相互に結びついた数えきれないほどのプレーヤーの事業活動を調整する。

日々、何百万という経済主体が「天猫」と「タオバオ」というアリババグループの大規模な消費者向けeコマース・ネットワークを通じてつながり、協調している。天猫は大手ブランド向けのウェブサイト、タオバオは小規模なブティックブランドや独立系の出店者、ウェブセレブなど幅広い層に開かれたオンライン市場である。どちらのネットワークも、顧客にパーソナライズされたショッピング・エキスペリエンス、即ち一人一人の買い物客にカスタマイズしたバーチャルモールを提供する。供給側を見ると、アリババのオンラインプラットフォームには売り手がオンライン店舗を運営し、メーカーと手を組み、物流プレーヤーと連携し、ネット決済を処理するためのツールが揃っている。そのすべてをデータ・テクノロジーが調整する。

スマートビジネスはネットワーク・コーディネーションとデータ・インテリジェンスという2つの要因を組み合わせることで、バリューチェーン全体を再構築し、大規模化とカスタマイズを同時に実現する。

スマートビジネスの方程式

以下のシンプルな式にアリババの成功の要因が凝縮されている。

<b>ネットワーク・コーディネーション+データインテリジェンス=スマートビジネス</b>

・ネットワーク・コーディネーション
複雑な事業活動を分解し、複数の人や企業で分担して効率的に行うこと。従来は垂直統合された組織や固定化されたサプライチェーンの中にしか存在しなかった機能も、いまやインターネット上でつながった者同士の連携を通じて簡単に実現できるようになった。

・データインテリジェンス
消費者の活動や反応に従って適切なプロダクトやサービスを生み出していく能力。企業が機械学習を活用して、急激に、しかも自動的に改善していく能力が含まれる。企業は意思決定を自動化し、継続的にリアルタイムデータ(サプライヤーの出荷時刻、製造会社の完了通知、配送の追跡、顧客の好みなど)を集めることで、高度なデータインテリジェンスを実践できる。

機械学習を通じて、データインテリジェンスは向上していく。より多くのビジネスプロセスがネット上に移行し、事業活動において相互に結びついたプレーヤー同士の協調が一段と必要になる時代には、定型的な意思決定を自動化し、人間にはおよそ不可能なほどの演算能力を確保することで、企業は大きな変貌を遂げることができる。これがスマートビジネスの本質だ。