Joyful 感性を磨く本

発刊
2020年9月29日
ページ数
456ページ
読了目安
623分
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喜びの感情を増やすための法則
周囲のものや環境は人の内面の感情や健康に影響する。形や色、パターンなどをうまく環境に取り込むことで、喜びの感情を増やすことができるとし、その10の法則を紹介しています。人が何に喜びの感情を持つのかという理解が深まります。

形のあるもので喜びを生むことができる

最近では、環境と心の健康の間に明確な関係があることを示す研究報告が相次いでいる。例えば、日当たりの良い職場で働く人は、薄暗い職場で働く人に比べてよく眠りよく笑うことや、花が人々の気分だけでなく記憶も向上させることが、研究で示されている。喜びの感情は謎めいていて捕らえどころがないが、その感情は実体的な物質的属性を通して呼び覚ますことができる。

 

喜びの感情を引き起こすのは、デザイナーが「エステティクス(美学、美的特性)」と呼ぶ、物体の外観や質感を定義する特性である。美学の集まりは、単なる装飾をはるかに超えて、深い感情的反応を引き起こす何かを持っている。

 

感情を刺激する「10の美学」

以下の10の美学は、喜びの感情と身の回りのものの実体的な性質との結びつきを明らかにしている。喜びあふれる世界は手の中にある。必要なのは、身の回りの喜びを進んで発見しようという意欲だけである。

 

①エネルギー:鮮やかな色と光

心理学者のいう「喜び」には「強烈で瞬間的なポジティブな感情体験」という意味がある。喜びは微笑みや笑い、ピョンピョン跳びまわりたくなる感情という、明確な兆候によって認識できる。

最も活気のある場所やものには共通して明るく、鮮やかな色がある。「色」と「感情」は切っても切れない関係がある。色を知覚する能力は、果実や栄養価の高い若葉を識別するために発達し、生存に必要不可欠だった。そのため私たちは色に本能で反応する。明るい色はそれを照らす光を活性化させ、光を空間に反射させて効果を増幅させる。

 

②豊かさ:みずみずしさ、数の多さ、多様さ

狩猟採集を行っていた初期の人間の生活は、豊かさへの偏愛のおかげで、思いがけない恵みを十分に活用し、その後必ず訪れる欠乏期に備えて資源を蓄えることができた。人は環境に豊かさを感じ取ると、無意識のうちに安心する。

本当に意味のある「豊かさ」とは、物質的蓄積ではなく感覚的豊かさだ。サーカスやノミ市が楽しいのは、豊かで歓喜に満ちた感覚的刺激が得られるからだ。豊かな感覚的刺激を得るには、色と質感、パターンを重ねることが必要であり、それを実現するのに多くのものは必要ない。豊かさとは、ものを蓄積することではなく、感覚を活性化する様々な質感の中に身を置くことである。

紙吹雪や水玉模様、ストライプなど、小さなものが何度も繰り返されると、1つ1つのかけらよりもずっと大きな、はじけるような喜びになる。形や大きさのバリエーションも喜びをもたらす。最大のインパクトを出すには、色相の違う大量のものを、できればいちどきに集めるといい。

 

③自由:自然、野生、広々とした空間

喜びの瞬間を表す表現には、屈託のない、気楽、気の向くままなど、自由を表すものがある。人生の特に喜びに満ちた瞬間は、何かの自由を手に入れた時だ。自然の中にいる時、人々は様々な日常の制約から一時的に自由になることができる。

 

④調和:均衡、シンメトリー、流れ

自然界には、対称な形状や模様など秩序がある。こうした調和が環境に及ぼす影響は強力で、無意識的に働くことが多い。周囲の世界に隠れた調和を発見し、明るみに出し、それを自分の環境に取り入れることによって、日々の生活にさりげない喜びを見出すことができる。聴覚的なものであれ、視覚的なものであれ、パターンやリズムは常に喜びをくれる。人は複雑度が中程度の、自然界に最もよく見られる種類のフラクタル(自己相似性)を強く好むことが研究からわかっている。

 

⑤遊び:円、球、泡のかたち

遊びは歓喜を味わうための最良の手段の1つで、太古の昔から人間の暮らしにあった。人間の活動の中で、喜びを得るためだけに行われるのは、遊びだけだと考えられている。

遊び心が感じられるほとんどの場所は、エネルギーと自由の美学を活用している。溢れんばかりのエネルギーと束縛されない自由は、ほとばしるような活力に満ちた遊び心を刺激する。

人間の感情脳は、尖ったものより丸いものを無意識に好む。「丸いもの」は安心や積極性と結びつき、会話や気ままな遊びの賑やかな中心地に変える。

 

⑥驚き:コントラスト、斬新

驚きは脅威だけでなく、好機に注意を向けさせることも多い。その場合、驚きの反応である集中力と覚醒度の高まりは、偶然の幸運や思いがけない棚ぼた、状況の変化といった幸福感を高めるイベントによる突然の喜びを活用できる心身を準備させる。こうした喜びは一瞬で消え去るように思えるが、ポジティブな感情の好循環を生み出すことによって、その後も長く影響を及ぼしうる。

人間の脳は、差異やコントラストに極めて敏感である。この能力は、驚きの美学ととても相性がいい。「一貫性」と「反復」によって明確な期待が示されると、驚きの要素がさらに際立つ。驚きには、他の感情を強める効果があり、喜びを拡大するレンズになる。

 

⑦超越:上昇、軽やかさ

喜びと上方向との関連付けは無意識的で自動的に行われる。上方への動きは喜びと相関している。

 

⑧魔法:見えない力、幻想

魔法は人生の意味と深い関係があり、宗教的・非宗教的を問わず、精神性を呼び覚ます効果がある。窓、日光、プリズム、静電気、蜃気楼、霜など、身の回りの謎に目を向けることで、魔法を呼び寄せることができる。

 

⑨祝い:同期性、きらめき、はじけるようなかたち

祝いは暮らしにおける喜びの頂点にあたる。人々は結婚やパートナーシップ、勝利や収穫、成長や新たな門出を祝う。そうした瞬間には喜びが溢れ出るように思われ、人々を集めて歓喜を分かち合いたいという、抗いがたい衝動に駆られる。喜ばしい出来事を人と頻繁に祝う人は、良い知らせを胸にしまっておく人に比べて幸福感が高いことがわかっている。

 

⑩新生:開花、拡大、曲線

新生の喜びは、色々な機会や状況で感じられる。依存症に別れを告げたり、新しい信仰を見出したりする時に、新しい生命に生まれ変わったような新生の感覚を得ることがある。新鮮さと可能性の感覚は、もっとささやかなことでも得ることができる。上手なヘアカットや、洗いたての服、全身をしっかり洗うことでも。

新生にはレジリエンスがある。喜びが必ず戻ると信じる時に湧き上がる、楽観主義と希望を再び燃え立たせることによって、困難から立ち直る力を得ることができる。