人の行動を変える仕掛け
人の行動を変えるには、無理やり行動を変えさせようとするのではなく、つい行動を変えたくなるように仕向ける。「ついしたくなる」ように仕向けることは不確実性を含むので遠回りに見えるかもしれないが、正攻法が効かない場合には有望なアプローチになる。
この行動を変えるきっかけになるものを「仕掛け」と呼ぶ。身近な整理整頓1つとっても、駐輪場の線、バスケットゴールのついたゴミ箱、背表紙の一枚絵など、動く歩道の足跡など様々なアプローチがある。
例えば、男子トイレにある「的」のついた小便器。この的は「つい狙いたくなる」という心理をうまく利用している。的は飛散が最小になる場所に貼られているので、的を狙うことによって知らず知らずのうちにトイレをきれいに使うことに貢献することになる。
仕掛けの3つの要件
問題解決につながる行動を誘うきっかけとなるもののうち、以下の3つを満たすものを「仕掛け」と定義する。
①公平性:誰も不利益を被らない
②誘引性:行動が誘われる
③目的の二重性:仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる
行動の選択肢を増やすもの
仕掛けは「行動の選択肢を増やすもの」ということもできる。新たに生まれた行動の選択肢の方が魅力的であれば自ら進んで行動を変えるだろうし、興味を引かれなければこれまで通りの行動を行えば良い。仕掛けの良いところは、あくまで行動の選択肢を増やすだけで行動を強要しないところにある。
元々何もなかったところ新たな行動の選択肢を追加しているだけなので、最初の期待から下がることはない。どの行動を選んでも自ら選んだ行動なので、騙されたと思って不快に思うこともない。つまり、仕掛けは誰の期待を下げることもなく問題を解決することができる。
・漫画を背表紙の一枚絵に合わせて並べる
・駐輪場の線に沿って停める
・ゴミ箱のバスケットゴールにゴミを投げる
・動く歩道の足跡の上に立つ
・トイレの的を狙う
仕掛けによって行動を変えた結果、本人の意図にかかわらず問題が解決される。
仕掛けの発想法
仕掛けのアイデアは、基本的には「アイデアとは既存の要素の組み合わせである」というのと同じである。使える仕掛けの発想法は以下の4つ。
①仕掛けの事例を転用する
対象とする問題と類似した仕掛けの事例が見つかれば、その仕掛けの一部を変えてみることが一番簡単かつ確実な方法となる。
②行動の類似性を利用する
「行動」を手掛かりにして仕掛けを考える。ゴミの「捨てる」という行動に着目して似ている行動を探すと「投げる」「しまう」「入れる」「当てる」「落ちる」といった行動が挙がる。それぞれの行動から連想する。
③仕掛けの原理を利用する
仕掛けは大分類2種類(物理的トリガ、心理的トリガ)、中分類4種類(フィードバック、フィードフォワード、個人的文脈、社会的文脈)、小分類16種類(聴覚、触覚、嗅覚、味覚、視覚、アナロジー、アフォーダンス、挑戦、不協和、ネガティブな期待、ポジティブな期待、報酬、自己承認、被視感、社会規範、社会的証明)の原理の組み合わせからなる。その各要素でアイデアを具体化してみる。
④オズボーンのチェックリスト
1. 他の使い道は?
2. 他に似たものは?
3. 変えてみたら?
4. 大きくしてみたら?
5. 小さくしてみたら?
6. 他のもので代用したら?
7. 入れ替えてみたら?
8. 逆にしてみたら?
9. 組み合わせてみたら?