「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実

発刊
2019年7月17日
ページ数
264ページ
読了目安
324分
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データが解き明かす結婚、出産、子育て
結婚や出産、子育てなどを経済学の観点からデータを読み解く一冊。データから人が何を考えているのか、その傾向や真実を紹介しています。

進む非婚化・晩婚化

戦後間もない1950年の50歳未婚率は1.5%と、当時はほとんどすべての人が結婚していた。男性の50歳時未婚率は、長年低いままだったが、1990年頃から急速に上がり始め、2010年には20%余りに達した。女性の50歳時未婚率は上下しつつも、2000年頃までは緩やかに上昇し、2010年には10%ほどに達している。50歳時未婚率で男女に大きな差があるのは、男性の方が再婚する人が多いためである。男性は、自分の相手には結婚歴がなく、自分よりも若い女性を好む傾向がある一方、女性は相手の結婚歴や年齢をそれほど気にしないといった理由が背景として考えられる。

1950年、平均初婚年齢は女性23.0歳、男性25.9歳だった。そこから次第に上昇し、2009年には、女性28.6歳、男性30.4歳へと大幅に晩婚化が進んだ。

なぜ結婚する人が減っているのか

調査によれば、結婚相手の条件として重視するものに、男性の8割、女性の9割が「人柄」を挙げている。一方で、愛情だけでは結婚できないと考えている人も少なくない。結婚相手には「家事・育児の能力」を重視すると答えた男性は5割近くいる一方、相手の「経済力」を重視すると答えた女性は4割近くに上る。また、結婚相手の「家事・育児の能力」を重視すると答えた女性は6割近くに上り、男性にも家事・育児の能力が求められている。さらに、自分の仕事を理解してくれることを重視すると答えた女性は5割近くで、結婚後も働き続けることを希望する女性が多いことを示す結果になっている。

結婚の経済的なメリットは「費用の節約」である。二人でバラバラにアパートを借りるよりも、同じ家に住んでしまえば、より安い家賃で、広く快適な部屋に住むことが可能になる。光熱費の節約にもなり、自炊も効率的に食材を使うことができる。

次に考えられるのは「分業の利益」である。二人で暮らすならば、自分が得意なものを相手の分までやる代わりに、相手には自分の苦手な作業をやってもらうこともできる。さらには「リスクの分かち合い」というメリットもある。独身者は、病気や怪我、失業などの潜在的な収入リスクに直面している。

結婚のメリットには「子供を持つこと」がある。但し、子育てには、お金だけでなく、時間がかかる。生涯所得で考えると、子育ての機会費用は、学費などの金銭的支出に負けない非常に大きなものである。

現在は、様々な面で「結婚のメリット」がどんどん減っている。その中でも大きいのは、結婚して子供を持つ費用が上がり続けていること。子供を持つことは、大きな喜びである一方、経済的な費用を伴う。この費用は人によって大きく変わる。高学歴でキャリアのある女性ほど、子育てによって暗黙のうちに失われる収入は大きくなるから、そうした女性が子供を持ちたいと思わない、結婚したいと思わなくなるのも無理ないことである。結婚し、子供を持ちたいと思う女性にとっても、その子供によって自分のキャリアが犠牲になってしまうことは無視できる問題ではない。

未婚率の上昇を考える上でもう1つ重要なのは、結婚から得られる「分業の利益」がどんどん小さくなってきていることである。「分業の利益」が大きいのは、夫と妻で得意なもの、苦手なものが大きく異なる場合である。現在は、収入面における男女差が小さくなってきている上、家電やサービス業の発達によって、そもそも自分たちで行う家事の総量も少なくなってきている。世の中が便利になるにつれて、家事・育児能力の家庭における重要性が低下してきている。