東大卒、農家の右腕になる。 小さな経営改善ノウハウ100

発刊
2020年9月2日
ページ数
400ページ
読了目安
526分
推薦ポイント 6P
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農家のための経営マニュアル
農業経営は、現場の改善の積み上げから始まる。日本の典型的な農家であった阿部梨園の経営改善にインターンとして入った著者が、現場の課題を1つ1つ解決していく中で、発見したノウハウをまとめた一冊。
生産性の向上と言われても、情報がなく、実践できていない農家のために、簡単に始められるノウハウが詰め込まれています。

現場の課題は可能性の山

「農家の右腕」として、栃木県宇都宮の阿部梨園で経営改善を提案し、推進してきた。外から経営分析や戦略立案をするような「コンサルタント」ではなく、従業員として毎日現場に常駐し、チームの輪の中に入り、自ら実行主体として頭だけでなく手を動かし続ける働き方である。自分の生活もキャリアも農園にすべて賭け、同じ船に乗って一蓮托生の挑戦を続けてきた。

 

2014年9月、阿部梨園でのインターン初日。1年の収穫量の内、約半数が一気にとれる幸水の収穫期間は最もハードで、収穫も出荷も接客もピークの繁忙期である。収穫・出荷・電話対応・注文管理などが入り乱れ、まさにカオス。寝食を削って山場を乗り切ろうとしている最中だった。事務所は雑然としていて、趣味の雑誌やら伝票の束やら物品やらが乱雑に積み上げられている。すべてが改善の山に見えた。イノベーションや制度改革などという前に、膨大で明らかな「やり残し」が現場にはある。

 

農業の経営課題は小さな改善の積み上げで対応する

梨の選果や梱包といった現場体験をするかたわら、手始めに、阿部梨園の経営について教えてもらうことにした。しかし、事業計画はそもそも存在せず、生産データもとっておらず、販売データは取引先ごとの売上総額がうろ覚えで出てきた程度。正確なのかも網羅されているのかもあやしい様子。確定申告の財務諸表はあったが、内訳は当てになりそうではなかった。

経営の全体像を分析して、抽出された課題を狙い撃ちで解決する。そんな問題解決の定石が通用しないと思い知らされた。定量的な経営指標がないなら仕方がないと、次に取った作戦は定性的なヒアリング。経営に関する質問シートを用意して、代表の阿部に答えてもらうことにした。しかし、回答の言葉数が少なく、経営者の感覚も言語化できなかった。これこそが日本の平均的な農家の現状なのだと察した。

 

もう1つ、阿部梨園について気づいたことは、事務所や作業場、店舗などの環境から、梨の出荷や接客などの業務まで、すべてにおいて改善できそうな箇所が無数にあるということだった。物の配置や作業の段取り、店頭の陳列や情報を工夫するだけで、仕事が少し楽になったり、間違いが少なくなったり、お客様が喜んでくれるようにできそうだと思えた。

経営を全体像から見直せないのであれば、現場の業務からボトムアップで改善することが、次善策として有効なのではないかと考えるようになった。そこで4ヶ月300時間のインターン期間で100件の改善を目指すことにした。

 

まずは掃除から

改善の手始めに書類の山を取り崩しつつ、断片的な数字や、基礎的な情報を拾うことから着手した。収納用品を買い足し、不要な書類を処分し、新設した分類ルールに沿って整理整頓。網羅的な情報を提出してもらうことが難しくても、必要そうな情報をこちらが採集するアプローチなら、時間はかかっても事が進む。

書類整理の次に着手したのが、休憩室兼事務所の掃除。家具類も一度すべて搬出した上で、仕事がしやすいよう配置し直した。結果として、変化が誰の目にも止まるので、経営改善のプロジェクトをスタッフに認知してもらえるようになった。経営改善によって自分たちの業務や職場がさらに良くなる。生産性が向上した利益は自分たちに還元してもらえる。経営改善を自分ごととして引き寄せてもらう契機になった。

 

100件も改善しなければならないので、短時間で完結できそうなことなら何でも闇雲に取り組んだ。業務進行の円滑化を重視してスタッフミーティングを新設したり、ToDo管理ツールを導入してタスクを見える化したり、月次目標を立てたりした。お客様がお買い求めやすくなるよう知恵を絞って、店頭の陳列や情報表示、サービスを見直したりもした。経営方針や行動指針のような根幹に関わる部分も、相談しながら策定した。するとスタッフもだんだんと次の改善を楽しみにしてくれるようになり、スタッフからも改善アイデアが出るようになった。

 

阿部梨園の知恵袋 〜農家の小さな改善事例300〜

農業経営において、日常業務レベルのノウハウが網羅されている情報源は存在しない。既存の役立つ情報源がないのであれば、阿部梨園が経営改善に悪戦苦闘した経験は、似たような境遇の同業者にとって価値のある情報になるかもしれないと感じ始め、これは数年で確信に変わり、阿部梨園の改善実例を公開するプロジェクトに至った。

 

https://tips.abe-nashien.com