感情的な心と理性的な心
遊んでいる時や趣味に興じている時、脳では快楽物質が多く分泌される。これは「ホットハート」という心が働くからである。ホットハートは直感的な行動を起こす心である。「食べる」「休息する」「子孫を残す」といった生物学的に「生き残る可能性を高める行動」を取れば楽しくなるようにホットハートは長年の間に形成された。
一方、人間は熟慮的な思考をする心「クールマインド」を持っている。人類は文明社会を築いたことによって、ホットハートでは対応できないことに、クールマインドという別の心を活用することにした。クールマインドは環境の変化に対して柔軟に働き、ホットハートの一部を調節できる。但し、ホットハートに比べて力は弱く、自ら快楽物質を分泌することもできない。
悩みの多くは遺伝で培ったホットハートと、クールマインドによるすれ違いが原因である。なんとなく感じたホットハートをクールマインドが勝手に理由づけしていることに起因している。一般に、ホットハートがいつ、どのように作動するかをクールマインドが知っていると、うまく「ホット&クール」が実現でき、悩みの多くを改善することができる。ホットハートとクールマインドの関係をしっかり自覚し、ホットハートの働きをコントロールする必要がある。
マイナスな気持ちを科学的に変える
ホットハートには、進化の過程で生き残るために必要だった機能を引き継いでいる。これは場合によっては厄介な働きをするため、人間に特有のクールマインドを駆使して、うまく調節していく必要がある。
悩み:雨の日になると憂鬱になって気分が滅入ってくる
原因:晴れの日は狩りに出かけ、雨の日は休む習慣が原因
対策:脳を上手にだまして、雨の日にできる楽しいことの実践を重ね、雨の日を楽しみに変える
悩み:やめようと思っても、ついつい食べ過ぎてしまう
原因:太るのは飢饉への備えのせいで、むしろうれしいことだった
対策:「おいしくない」という想像をすることで、自分をだます
悩み:大人になっても全然、人見知りがなおらない
原因:身近な個体は仲間、知らない個体は敵だった
対策:人見知りを改善させるには慣れるしかない
悩み:何に対しても情熱が湧かない
原因:今、幸せな状態だったら、人は幸福感を得られにくい
対策:かつての幸福でない状態を覚えておき、それを思い出して現状と比較する
悩み:自分をよく見せたいために見栄っ張りがやめられない
原因:上位を目指すチンパンジーの典型的なアピール方法は牙をむくこと
対策:見栄っ張りがやめられない場合には職場以外でアピールをする
悩み:何をやっても後悔ばかり
原因:未来の選択をよりよくするために「後悔」は必要だった
対策:後悔をポジティブに変えるためには、よくなる未来を想像する