永続的な優位性を築くことはできるのか
優位性が揺るがないような、独自のポジショニングを追求しても、それは幻想に過ぎない。知的資産やポジショニング、ブランド認知、生産規模、そして流通ネットワークすらも、長時間の競争に耐え得るものではない。どんな価値提案も、それにどれほど独自性があっても、脅かされないことはない。良いデザインや優れたアイデアも、それを企業秘密にしても、特許があっても、結局は真似される。
こうした状況の下で、長期にわたって成功するための唯一の方法は「リープ(跳躍)」することだ。先行企業はそれまでとは異なる知識分野に跳躍して、製品の製造やサービスの提供に関して、新たな知識を活用するか、創造しなければならない。そうした努力が行われなければ、後発企業が必ず追い付いてくる。
先行企業がリープしないのは、企業幹部らが現在の事業の目標達成に関して、大きなプレッシャーを受けているからだ。長期的な観点で良いと思われることは、短期的には犠牲を伴う。
ディスラプションを味方につける5原則
企業がリープするためには、次のような新しい考え方とマネジメントが必要になる。
①自社の基盤となっている知識とその賞味期限
破壊的なイノベーションや消費者の嗜好の変化がない時でも、後発企業は先行企業に対して恐るべき攻撃を行う。この危険なシナリオを回避するためには、企業幹部はまず何よりも、今自社の基盤となっている知識、核となる知識を再評価し、その成熟度合を評価し直す必要がある。危険を避けるには、まず自分たちの位置を知ることから始めなければならない。
②新たな知識分野を見つけ、開拓する
ある分野での知識の発見が別の分野での発見につながる。究極的には、この継続的な発見のプロセスが、成長のための新たな道を切り開いていく。競争優位を確立するには、こうした新たな知識の吸収と、新市場や新事業のタイムリーな創造が重要になる。現在あるものを修正するのではなく、大きく前に進むことによってのみ、先行企業は後発企業の追い上げから逃れることができる。
③地殻変動レベルの変化を味方につける
歴史によって過去の理解することが新たな知識分野へのリープという概念の確立につながるのならば、私たちは歴史についての理解を基に未来を考える必要がある。勝利するためには、自らの周囲の地殻変動を活用し、それに従ってリープしなければならない。今後数十年で重要になってくる力を認識し、他社よりも先に自社のコンピタンスを再構成しなければならない。
④実験、実験、実験
企業幹部らは重要な情報が欠けていることさえ、気づいていない可能性がある。証拠に基づいた意思決定を行うには、頻繁に実験を行う必要がある。そうすることで、わからない部分を減らし、必要なレベルの情報をもって結論を下す。
⑤実行へのディープダイブ
先行企業のリープを難しくするのは、変革的な事業提案も、上の階層に上げられる中で却下されてしまうことだ。だからこそ、頂点に立つ人物が、必要な時には介入して新たな方向性を実現しなければならない。経営トップ個人が重要な分岐点で介入し、その力を活かして障壁を乗り越えることを、CEOの「ディープダイブ」と呼ぶ。この原則によって、先行企業が自社を再構築し、自社の仕組みを変えるための最後のハードルが取り除かれる。