ファイナンスとは
ファイナンスは、それだけわかっていても意味をなさず、実用性はない。実用性という観点から言えば、ファイナンスよりも会計や税務をわかっている方が手に職があると言える。ファイナンスは、スキルやノウハウではなく、「物の考え方」であり、教養である。この教養を、事業家として事業に生かせるようになってはじめて「ファイナンス」を身につけた意義が出てくる。「お金という枠組みで思考するためのフレームワーク」を用いて実際の現場で意思決定を行っていくことが、ファイナンスを学ぶ意義である。
ファイナンスとは、一言でいうと「物の値段」を考えることである。物に値段をつけるのは、目に見えるものだけではない。目に見えないものにも値段をつける。例えば、M&Aの本質は、会社という目に見えないものに値段をつけ、買うべきか否かを判断することである。自分で考えた値段が他のみんなが考えた値段よりも高ければ、お買い得のものを見つけたということになる。
ファイナンスは実務でしか学べない
ファイナンスとは、意思決定を行うための方法論である。しかし、ファイナンスは、それだけわかったからといってお金を生み出せるような錬金術ではない。その考え方を事業に活かしてはじめて、ファイナンスを学んだ意義が出てくる。
では、「実務に活かせるファイナンス」はどのように学べば良いかだが、実務に直結するファイナンスの教科書は見たことがない。ファイナンスを「どのように事業で活用すればいいのか」を教えてくれるものは存在しない。ファイナンスを駆使している事業家たちは、とにかく実務をこなして学んでいる。大量の実務に携わりながら、ファイナンスの体系的な考え方を身につけている。
ファイナンスを実務で活かして成果を出すには、「裏の道」を探し出す必要がある。つまり、みんなが表の道だと思って通っている道ではなく、道だとも思っていないようなところを見つけて通らなければならない。現実の市場は完全に効率的というわけではない。ファイナンスの考え方を用いて、効率的でない部分を探し出し、リスクをとって投資の意思決定をすることが、大切である。
企業の本当の価値は、単なる数字だけで測れるものではない。企業の価値は、表面的な数字だけでなく、将来的な予想や環境の変化、組織のオペレーションや企業文化、顧客との関係構築など様々な要因で決まってくる。ファイナンスのプロフェッショナルには、この「一見すると目には見えない価値を見抜く技術」が求められている。
そのためにも、ファイナンスを活用するには、良くも悪くもみんなと異なる自分独自の仮説を立て、それが正しいことを立証していく必要がある。
不確実性が高いからこそチャンスがある
経済は常にアップダウンする。これは投資家たちの間に、マーケットの動きに対し何かと理屈をつけて定型化しようとする傾向があるからである。これがバイアスで、これらは不変の真実であるかのように語られる。先入観が市場参加者の間に蔓延し始めると、バイアスを信じた投資家たちが資金を投入し、次第にマーケットが膨張していく。そうなるとバブルがどんどん膨らんでいく。そして必ずいつか反動が起きて、バブルが破裂する。
物の値段に正解などない。どんなものでも、適正価格をピンポイントで設定するということは、そもそも不可能である。常に割安だったりするのと同時に、状況によって適正価格自体も動いていく。常に実態と期待値がお互いに追いかけっこしているようなもので、一所に留まっていることはない。このように不確実性が高いからこそ、ファイナンスの世界にはチャンスが潜んでおり、儲けるポイントも散りばめられている。不確定な状況でいかにリスクを抑え、高いリターンを出すか。それがファイナンスを仕事で使うビジネスパーソンに期待されている結果と言える。