いきたい場所で生きる 僕らの時代の移住地図

発刊
2017年1月26日
ページ数
358ページ
読了目安
371分
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移住したくなったら読むといい本
リモートワークやLCCの普及により、働き盛り世代を中心に「移住」への関心が高まっている。若い世代を中心に国内外へ移住した人々へのインタビューから、場所にとらわれない働き方を考えさせる一冊。

変化する移住のイメージ

2016年に発表された総務省の調査によれば、移住に関する相談件数は14万1683件にのぼる。この調査での相談者の関心事は「住まい」の次に「仕事」がきている。つまり、この相談者たちは、年金暮らしのリタイア後の楽園探しとして移住を考えているわけではない。

移住といえば定年退職後のシルバー世代が終の住処を探す、もしくは都市での生活が合わず故郷へUターンする、といった旧来のイメージが強かったが、近年の移住に対するイメージは大きく変わってきた。

NPO法人ふるさと回帰支援センターの調査によれば、2009年頃から、40代以下の世代の地方移住の相談が急増し、2008年では2901件だった相談件数は、2013年には10827件に増えている。年代別の割合でも40代以下は2008年の30.4%から2013年には54%にまで上昇している。地方のQOLの充実が「理想の暮らし」の大きなキーワードであることに違いはないが、そこに魅力を感じている世代は、以前と大きく変わってきている。

移住が注目される理由

シニア世代のリタイア後の移住だけではなく、もっと経済活動に密着した20〜40代という働き盛りの世代たちの移住が注目されているのには4つの理由がある。

①通信技術
常時スマホでネットに接続し、メールやチャット、SNSで世界中の誰とでもやり取りができ、共通の情報を得ることが当たり前の時代になった。情報格差が狭まり、大容量データの送受信も可能となったことで、仕事をする上で大都市も地方や国外も変わらなくなりつつある。

②リモートワーク
リモートワークとは、ITを活用した、場所にとらわれない柔軟な働き方のこと。狭義には在宅勤務を指す場合もあるが、日本の企業でも実験的に取り入れるところが増えてきている。

③ソーシャルメディア
スマホの普及により、チャットアプリが国民的に浸透し、離れた場所にいてもリアルタイムに意思の疎通ができるようになった。それは遠距離の国内間、国外間の心理的、物理的な距離を縮め、移住者のコミュニティづくりに多大な貢献を果たしている。

④LCC
LCCによる移動時間の短縮と費用の節約により、地方との行き来が手軽になった。

以上のように、地方や国外でも日本の大都市と変わらない働き方や収入を得られる手段が確立されつつある。そのため、働き盛り世代の国内外への移住が現実のものとなってきた。

移住のハードル

移住に関しては、年齢というより、独身、結婚、出産、子育て、親の介護、転職、独立などのライフステージによるところも大きい。特に仕事の変化は重要な移住のファクターである。地方との賃金格差は事実である。それに比例して生活コストが高いのが首都圏の悩みとなっているため、どちらのQOLが高いかは、人によってまちまちである。ただ、移住を真剣に考える人にとって収入源の確保は切実な問題であり、移住した場所で就職先を探す場合、大きな壁となって立ちはだかっている。

移住のススメ

地方は「自然が豊かで過ごしやすい」というが、それだけでは差別化できず、町の気質や特徴のようなものと自分の人生や生活がマッチするかということを見定める必要がある。

最初から直接移住するのではなく、暮らしを試す「試住」を、まずは検討したい。その町と関わりを持ったご縁で好きになったとか、この町に呼ばれていると感じるなど、個人的な一期一会があってこそ、その町に、村に、都市に行く決心がつくのではないか。会社員を続けながら週末のみ興味がある土地に通ってみたり、副業をやりながらの移住を考えるといったやり方が現実的には望ましい。

とにかく実際に自分がピンときたところに行ってみること。ルーティーンの日常に浸かっていると、それ以外の現実に気づけなくなっていることが多い。