一流の本質~20人の星を獲ったシェフたちの仕事論

発刊
2017年3月16日
ページ数
280ページ
読了目安
342分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

ミシュランで星つきシェフ20人の仕事論
ミシュランで星つきのお店となったシェフたち20人が語る仕事論。いかにして、美味しい料理は生み出されるのか、いかにしてお客を喜ばせるのか、という真髄が書かれています。

「常識」はクリエイティビティの邪魔になる 〜梁山泊〜

卸売業者や生産者との付き合いを大切にしてきたのは、それが手っ取り早いと思ったから。専門的な料理屋や学校で教わる知識は、常識ではあるが実はクリエイティビティの邪魔になる。

オリジナリティを出すというのは難しいことだが、スタッフがそういった定型のない料理をつくる料理人になるために一番大切なのは、自分自身がクリエイティビティを発揮し続けること。口で理屈を言うだけじゃ誰も動かない。自分が現場へ行って見本になって、死に物狂いで朝まで勉強している姿を見せないとダメ。技術なんて、そんなのは汚いかキレイかだけ。大切なのは、自分で自分を鼓舞できる仕組みを持てるかどうか。現場で繰り返し体験することによって自分の中が少しずつ開拓されて、内から湧き出てくる回路が生まれてくるんじゃないか。

常に「一歩先の理想」を掲げる 〜カンテサンス〜

いずれはシェフになって、自分の料理をつくりたいという気持ちは、料理人を志した時から持っていた。常に心にあったのは「30歳で料理長にならなければ先はない」という言葉。そのためには逆算して「今、何をすべきか」を常に意識していた。人間というのは目標もなく努力することは不可能である。目標は具体的であればあるほどいい。

フランスから帰国後の2007年に東京・白金台にレストラン『カンテサンス』をオープン。世界に発信するようなレストランにしたいという思いで始めた店で、翌年の『ミシュランガイド2008』で三ツ星を獲得。世界を相手に勝負したいなら、ここでしか食べられない料理を出さなければならない。この思いは『カンテサンス』をつくるにあたって強くあった。

一時頑張るのはそれほど難しくないもので、大事なのは継続すること。ほんのわずかでも常に成長し続けることを目標にしている。それには、毎日、ささやかなことでも「ちゃんと考える」ということが大事である。料理人の作業そのものはルーティーンがほとんどだが、昨日と同じようなことをしているからといって「これはこんなもんだ」と思ってしまえば、成長は止まる。そうならないためには、常に一歩先の理想を掲げること。「もっと良くできないか「」「ここを変えられないか」と考えることをちょっとずつやり続ける。

答えが見つかるまでには時間がかかることもあるし、すぐ思いつくこともあるが、課題を自分の中に持っておくことこそが大切。すると、誰かの話を聞いた時に「それってヒントになるかも」とつながることがある。常に課題を持ち、その答えを探し続ける。そういう日々の積み重ねでしか成長はできない。

可能性は自分次第でどこまでも広がる 〜祇園ささ木〜

仕事の原動力は「借金」。借金を返すためにはお客さんにウケなければならない。来てくれたお客さんには絶対満足してもらわなくてはいけない。それも普通の満足ではなく「ここに来たら間違いないわ!」みたいな満足感。だから死に物狂い。借金があったら何でもできる。

それと思いっきり遊ぶこと。遊びは中途半端にやってはいけない。遊びこそ、お金をかけてトコトンやるべきである。そして、若手にはいつも「スケベになれ」と言っている。スケベな人間は、カメラマンで言えば一瞬のシャッターチャンスを見逃さない。ある意味、女の子のパンチがチラッと見えるような、その瞬間を見逃さないこと。それと同じように、料理でも「今、砂糖入れな」「今、塩入れな」という瞬間が見えない人間はダメ。それが気遣いにつながる。