小さな連想の積み重ねがブランドを印象付ける
ブランドとは、簡単に言えば消費者の心の中にある連想の集まりである。製品やサービス、機能、デザイン、広告などのように、こうした連想の多くは意識できる。しかし、これは氷山の一角にすぎない。無意識の内にブランドと結びつけられた強い印象や感情的な意味合いの多くは、意識の下にある。このブランドに対して無意識に抱く印象を「ブランド・ファンタジー」と呼ぶ。意識下にあるつかの間のイメージ、抽象的思考、繊細な感情など、目に見えない連想の組み合わせが、気づかないうちに、私たちの意思決定や行動に大きな影響を及ぼす。
実は、自分で意識しているよりも、脳はずっと多くのことをキャッチし、解析している。意識下では非常に多くのことが起こっているのに、自分では気づいていない。私たちはブランドと出合うたびに、小さな連想が山になる。連想はそのブランドを見た場所だったり、一緒にいた人、その時自分がしていたことだったりする。こうした経験はすべて、目立たないように少しずつ、そのブランドに対する潜在的な印象に影響を及ぼす。
無意識の内にブランドに対する印象決まる
直感や本能というのは、無意識の感情が私たちをより良い決断へとひそかに動かす働きを指す。こうした私たちの意思決定に日々影響を与えているものを「ソマティック・マーカー」と呼ぶ。「ソマティック」とは体に関係するという意味で、体の変化として生じる感情を指す。手のひらが汗ばむ、心拍数が上がる、胃がキリキリするなど、感情と結びついて体に感じる変化である。「マーカー」とは、感情がある刺激と結びつくことを表す。私たちがあらゆるブランド経験に肯定的あるいは否定的な色をつけると、無意識はその経験を裏付けとして保存し、そのブランドに対するソマティック・マーカーや直感を作り上げる。
ブランドのソマティック・マーカーは、広告などのブランド・コミュニケーションを通じて作られるだけではない。消費者がブランドと何らかの形で関わるたびに、1つ1つ作られる。競合相手や自分のブランドとは関係ない連想からも作られる。
独自のかっこよさを見つけよ
どんな業種であっても、人が商品やサービスを選ぶのは、その一員となりたいと思うようなものを体現しているからだ。そこにはその商品カテゴリーに求めるかっこよさがある。そこで鍵となるのは、独自のかっこよさを見つけ、それを作り出して維持するためにあらゆる努力をすることだ。
購買決定にとって重要な感情はソマティック・マーカー、つまりブランド全般に対して抱く印象だと認識すべきである。それはブランドに関する小さな連想すべての総和なのだ。こうした印象を作り出す方法はいくらでもある。
ブランド・ファンタジー・モデル
様々な連想を積み上げる前に、まずは自分でブランドを感じる必要がある。ブランドの核心を徹底的に肌で知る必要がある。心の中にブランドの印象が出来上がったら、それを形にする。自分が引き出した豊かな印象を紙の上に捉え、共有し、それを発展させていく。大切なのは、ブランドに触れた人が誰でも理解できる方法、創造的なマーケティングやブランディング素材を引き出せるような方法で、ブランドの印象を捉えることだ。
①コア・ワード
ブランドの印象やファンタジー、エッセンスをつかむきっかけとなる3〜5個の単語を見つける
②ファンタジー・ネットワーク
ブランドの鍵となる連想ネットワークを「マインドマップ」にまとめる
③多元的なムードボード
イメージやメタファーを使ってファンタジーに息を吹き込む抽象的な説明を考える
④トリガー
豊かなファンタジーの残りすべてを引き出す略語か短いフレーズを1つ考える
ブランド・ファンタジーを構築する時には、それが「消費者(ターゲット)」「商業(市場)」「文化(動向)」に一致しているか確認する