The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ) なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか

発刊
2020年7月23日
ページ数
408ページ
読了目安
638分
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賢い人ほど愚かな決断をしやすい原因と対策
IQの高い人が必ずしも合理的な判断を下すとは限らない。賢い人ほど陥りやすい思考の落とし穴を紹介しながら、どうすれば賢明な判断をすることができるのかを紹介している一冊。

賢い人ほど知性のワナに陥る

「知能の高い人ほど判断力も優れている」という前提には重大な欠陥があることが、最近の研究で明らかになってきた。一般的知能や学校教育は、私たちを様々な認知的過ちから守ってくれないだけではない。賢い人はある種の愚かな思考に人並み以上に陥りやすい。

例えば、知能も教育水準も高い人は、自らの過ちから学ばず、他人のアドバイスを受け入れない傾向がある。しかも失敗を犯した時には、自らの判断を正当化するための小難しい主張を考えるのが得手であるため、ますます自らの見解に固執するようになる。さらに、こうした人々は「認知の死角」が大きく、自らの論理の矛盾点に気づかないことが多い。

こうした過ちの多くは、知能、教育、職業上の専門能力が高い人に特有の、悪しき思考習慣「インテリジェンス・トラップ(知性のワナ)」から生じる。知能は事実を学んだり思い出したり、あるいは複雑な情報を迅速に処理したりするのに役立つかもしれない。しかしその知力を適切に使いこなすには、チェック&バランスも必要だ。それがなければ、知能が高くなるほど、思考は偏るかもしれない。

 

インテリジェンス・トラップの4つの類型

①「暗黙知」と「反事実的思考」の欠如

計画を実行したり、自らの行動から悪影響が生じるのを回避したりするのに不可欠な、「暗黙知」と「反事実的思考」が欠けている。

※反事実的思考:ある出来事の別の結末を考えてみたり、自分が別の状況に置かれたところを一時的に想像してみる能力

 

②「合理性障害」「動機づけられた推論」「認知の死角」

「合理性障害」「動機づけられた推論」「認知の死角」を抱え、そのために自らの思考の欠陥に気づかず、いつまでも過ちを正当化する理屈を考え続ける可能性がある。これは入手可能な証拠をすべて検討することなく、自らの信念の周囲に「理屈で固めた小部屋を作る」ことに他ならない。

※合理的障害:知性と合理性のミスマッチ。認知的倹約(直感による判断)やマインドウェア汚染(土台となる知識の誤り)が原因の場合も

※動機づけられた推論:結論が想定していた目標と合致している場合のみ、頭を使う無意識の傾向

※認知の死角:他人の欠点には目ざとい半面、自らの偏見や思考の誤りに気づかない傾向

 

③獲得されたドグマチズム

「獲得されたドグマチズム」によって、自らの判断に過剰な自信を抱くようになる。それによって自らの限界を認識できなくなり、手に負えない状況に陥る。

※獲得されたドグマチズム:自分に専門知識があると考え、偏狭になり、他者の視点を無視してもよいと思うようになること

 

④専門知識の逆襲

専門知識があるために凝り固まった考えや無意識の行動をとるようになる。この「専門知識の逆襲」によって大惨事が迫っているという明らかな警告サインが目に入らなくなり、バイアスの影響を受けやすくなる。

 

インテリジェンス・トラップを回避するための思考法

インテリジェンス・トラップが生じるのは、立ち止まり、最初に頭に浮かんでくる考えや感情をコントロールして、身の回りの世界を別の視点から眺めてみることが難しいからだ。

インテリジェンス・トラップを回避するのに重要な特性には、以下のものがあり、これらが組み合わされば、知性を正常な軌道にとどめ、思考が崖から転落するのを防げる。

 

①知的謙虚さ

自らの判断の限界を受け入れ、誤りを犯さないように対策を講じる。

 

②積極的なオープンマインド思考

自らの意見に疑問を呈するような別の視点や証拠を意識的に探し求める。

 

③知的好奇心

知識欲があり、興味や疑問を抱く。好奇心は学習効果を高めるだけでなく、動機づけられた推論や認知的バイアスを防ぐ効果もある。

 

④優れた感情認識

感情のコントロールをうまく組み合わせると、認知的、感情的バイアスを防ぐのに役立つ。

 

⑤しなやかなマインドセット

才能は伸ばしたり訓練できるものという考え方。しなやかなマインドセットは、知的謙虚さのような属性を助長し、賢明な判断につながる。