意志力は役に立たない
情報とテクノロジー革新によって、多くの人が急激な環境変化の犠牲になっている。新しいルールに則った新しい世界で自分を律することができずに、様々な中毒に屈している。「テクノロジー」中毒に加え、炭水化物や糖分を多く含む「食べ物」や「カフェイン」、「仕事」といった刺激物に中毒している。その結果、ほとんどの人が常にストレスと睡眠不足に陥ってしまっている。
依存状態が当たり前になっている自分の人生をコントロールするには、その方法に意志力を選んではならない。変わろうとして歯を食いしばりながら努力しても、効果はない。意志力とは筋肉のようなものだ。有限なリソースであり、使用と共に消耗していく。その結果、忙しい1日が終わる頃には、意志力という筋肉は疲弊し、無防備な状態になる。
意志力とは、自分が人生で何をしたいのかまだよくわからない人のためのものだ。意志力の代わりに必要なのは、環境を自分で作り出し、それをコントロールする力だ。
自分の環境をコントロールせよ
人は誰もが自分の環境によって形作られている。人がどんな行動を取れるかという可能性は、その人がいる状況によって異なる。だが、環境は自分でかなりコントロールできる。環境をどう選択するかが鍵となる。
目標設定と態度だけに焦点を定めても、わずかな行動に対してしか効果は見られない。目標設定そのものに焦点を絞ってメンタル面に働きかけるテクニックや戦略は、概してうまくいかない。なぜなら、ほぼすべての行動は、環境によって外から働きかけられるものだからだ。
人生に変化を起こしたいなら、意志力を発揮するのではなく、ただ環境を変え、自分が演じている役割を変えればいい。これをうまくやるには、次のことを理解している必要がある。
・自分に何ができるかは、意志力ではなく「状況」による
・あらゆる環境には「ルール」がある
・あらゆる環境には「上限」がある
・人の価値観は絶対的ではなく「相対的」
・人は常に「役割」を演じている
ストレスとリカバリーの2つの環境をつくれ
人間は、鍵となる2種類の環境を必要としながら進化してきた。「強力なストレス」と「リカバリー」だ。どちらの環境においても、そこにいると人は完全に「自分がいる状況」に集中できる。ストレスに満ちた環境では、完全に100%スイッチが入った状態になる。リカバリーに向けた環境では、完全にオフになる。
成長は、ストレスを受けた後、休んでいる間に起こる。何かに秀でるには、多大な努力を要する環境からゆっくり休める環境へと、シフトし続けている必要がある。どちらの環境でも、それぞれにどっぷりのめり込まなければならない。努力を要する環境にいる時は、意識を集中させて難題に立ち向かう。リカバリーの環境にいる時は、仕事のストレスや運動、そして世間からも、自分を完全に切り離す必要がある。
創作活動におけるひらめきも、過酷で大変な作業から精神的にリカバリーしている時に起こる。研究によれば、クリエイティブなひらめきの内、仕事中に起こるものはわずか16%にすぎない。クリエイティブなひらめきは「有用なつながり」を作ることでやってくる。こうしたつながりは、そのプロジェクトや問題に向かって自分を追い込み、集中して考え、その後に休息を取らない限り、生まれてこない。
仕事、人間関係、健康、精神性、その他人生のあらゆる領域で目標を達成するには、「強化された環境」と「リカバリー環境」のどちらのタイプも必要となる。