「評価と報酬」を変えなければならない
働き方改革を、ただの時短、労働時間削減、効率化、生産性向上、テレワークやAIなどのIT投資など、矮小化してとらえては失敗する。それはツールであり、プロセスである。本気の「経営戦略としての働き方改革」に取り組まないと、かえって労働問題のリスクが起きたり、人材が逃げたり、売上が落ちることもある。本気の働き方改革を推進する企業は、以下のような評価と報酬の設計に手をつけている。
・時間に依存しない評価・完全アウトプット評価に移行
・自己研鑽に補助金・資格取得にポイントがつき、定年後給与に反映
・削減した残業代を生産性の高いチームにボーナスで還元
・給与テーブルを廃止し、市場価値を評価基準に
・チーム全員が設定労働時間内におさまっていることを表彰
「対症療法」で乗り切ろうとすると働き方改革は失敗する。経営者の本気度は「評価と報酬」にまで手をつけるかどうかで決まる。
制度が先か、理解が先か
「ただ帰れ」はダメな改革だ。では、「アクションチェンジ」と「マインドセット」のどちらが先かというと、実例からみると「アクションチェンジ」の強制を先にした方が成功することがわかった。つまり「△時消灯」「○時パソコンの強制ログオフ」「早帰りデー」も「アクションを最初に決める」ためには必要だ。
多くの中間管理職は「長時間労働をして今の自分の地位がある」というDNAを持っている。彼らの意識を変えるのは難しいため、まずはアクションを決める。
仕組み、制度、評価や報酬などの改革、IT投資などで、アクションが形骸化しないよう、アクションすれば良い循環が起きることを「見える化」して支え、トップが諦めず旗を降り続け、発信することで「1年半から2年」で社員の多数にマインドセットが起きてくる。続けるうちに企業のDNAが変わってくる。
働き方改革を担う各自の役割
①経営者まずは経営者が「人材が豊富な頃のビジネスモデルや制度」を改める。トップがコミットメントし、社内にメッセージを送り、取引先、役員、中間管理職を説得し、制度改革や生産性のための新たな投資への決断をする。経営者の本気度は「評価と報酬の設計」まで手を入れる、取引先を説得するなどの「巻き込み度」に現れる。
②個人
業務の効率化、やめる仕事の選択、共有化(マニュアル作りなど)、できることはある。まずは「時間」を有限なものと意識することだ。個人のロールモデルはワーキングマザーだ。業務効率化に取り組み、「時間」という資源を最も意識している。保育園のお迎えという「強制終了」の時間が決まっているからだ。また、突然の子供の病気で休まなければならないという事態もあるので、「仕事の属人化」から「仕事の共有化」へと自分が休んでも業務が回るように取り組んでいる。
③上司
労働時間は有限という意識のもと、「リソースの最適配分」をしなければいけない。さらに「長時間労働をして今の自分の地位がある」という成功体験を持っているため、スキルと同時に意識改革も必須である。そのためには、評価軸を変更しなければならない。
業務プロセスと所用時間を「見える化」して効率化する
仕事の効率化を考える上で重要なのは、互いのスケジュールを把握することだ。これまでは部下が上司の予定を把握していることはあっても、上司が部下の予定を把握していることは稀だった。それがスケジュールの共有化を行えば、上司も部下の予定を見るようになる。部下の退社時間を知ることで、上司も仕事を振りやすくなる。
スケジュールの共有化により、関係性も向上する。お互い、誰がどんな仕事をしていて、何時に帰るのかといったことを意識するようになるので、自然い声をかけあう空気も生まれる。