アートには資産的な価値がある
日本では一般的にまだ広く認知されていないが、アートは「文化的な価値」だけでなく、金融資産や不動産と同じように「資産的な価値」を持つ。海外では現代アートの持つ資産的意味合いが広く伝わっており、若い世代でも積極的にアートを購入している。評価の定まっている作品以外にも、今後の成長が期待できる作家の作品を購入し、評価が上がるまで長期的に所有することも一般的に行われている。
現代アートの作品は、そもそもの意味がわかりにくく、作品を一瞬見ただけでは、作家の意図を理解できないことがある。そして、それ以上踏み込むことをせずに「わからないもの」として放ったらかしにされることが多い。このことが一般人が近寄りがたい原因になっている。
アート作品は、需要に対してつくられる作品数が限られる。そのため人気が上がれば、需要に応じて数年で価格が数十倍以上になる作品も珍しくなく、一旦ブームに火が付くと、驚くほど価格が上昇する。
コンセプトの面白さを競う現代アートがビジネスに
一般的に美術と言えば、視覚的な美しさや完成度の高さ、観る者の心の琴線に触れるような作品を言い、いわゆる著名な美術作品は、画家本人が描いたオリジナルの1点ものや限定部数を設けた版画作品等であり、その稀少性にとって美術品としての価値が保たれていた。
しかし、マルセル・デュシャンというフランス人のアーティストがコンセプチュアル・アートという概念をつくり、技法やその造形美だけでなく、新しい概念を形成することこそがアートだという最初の礎をつくった。マルセル・デュシャン以降は、それまでアートにはなかった新しいコンセプトをつくる競争が始まり、美術史の新しい文脈に位置付けられて、よりコンセプチュアルなアートが高く評価される時代になった。現代アートでは「作品をコンセプトで表現する」ことが重要になった。
マルセル・デュシャン以降、アートの持つ可能性が爆発的に広がり、それを流通させるマーケットにも大きな変化が生じた。骨董品を競売によって購入するという小規模な取引市場から、オークションハウスがアート作品の価格を上げるためのエンジンへと変わり、これまでになかった新しいビジネス市場がつくられた。世界中のアート・マーケットは拡大し、現在では8兆円を超える市場規模になっている。
評価が上がる作品に共通する特徴
①発明品である
どこかで見たことのあるものではなく、これまで存在しなかった技法、制作方法、コンセプト、表現方法であること。それまでどこにもない発明品は、新たな美術史の文脈を形づくっていくことになる可能性がある。
②インパクトの大きさ
その作品を見た時の鑑賞者が受ける衝撃や、作品が社会的に衝撃を与えるような話題作であること。インパクトは単純に見た目だけではなく、その作品が社会に放つメッセージが多くの人々の共感や感動を呼ぶものであり、または刺激的な事件として取り上げられることもある。
アートをコレクションする際には、この2つの原則を最低限知っておく必要がある。自分の趣味で適当に好きなアートを買って行くと、間違いなく投資効率は低くなる。
アートを購入する時に注意すべきこと
①価格の上がる仕組みのないところで作品を買ってはいけない
一般的に人気がない作品はギャラリーの店頭販売では価格は据え置きである場合が多い。セカンダリー・マーケットの実質的な販売価値はゼロに近いため、売る時に買い手がつかない。つまり、価格が上がらない安い作品ばかりを扱うギャラリーからは買ってはいけない。
②ずっと同じ作品ばかりつくっていて、代わり映えしない作家から買ってはいけない
成功する前に作家活動をやめてしまうと、そこで価値が白紙に戻ってしまう。作家が、環境に合わせて自分を柔軟に変える才能があるかを見極める必要がある。過去の作品と現在の作品を比べて、それが常に進化していて、新しいチャレンジをしているかどうかをチェックする。
③今を感じさせない作品は買ってはいけない
価値が上がる作品は現在の社会を表現しているかどうかにかかっている。高く評価されるアート作品は美術史の中にあり、その作品はその時代性を反映した作品である。その時にしか出てこない斬新さ、絶対的なオリジナリティというものを重要視する。