Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法

発刊
2017年5月25日
ページ数
352ページ
読了目安
477分
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Airbnbはどのようにして生まれたのか
宿泊施設・民宿を貸し出すマッチングサイト『Airbnb』の創業物語。

Airbnbのはじまり

家賃が1150ドルに上がり、支払い期限は翌週に迫っていた。チェスキーの銀行口座には1000ドルしかなかった。だからどうやって小遣い稼ぎをしようかと頭をひねっていた。その1つが、サンフランシスコで開かれる予定の、国際デザイン会議にまつわる商売だ。数千人のデザイナーがサンフランシスコにやってくる。ホテルは一杯で値段が釣り上ることはわかっていた。そこで、会議に合わせてアパートの空き部屋で民宿をやってみようということになった。クローゼットにはたまたまキャンプ旅行から持ち帰ったエアマットが置いてあった。朝食付きで安い寝床を提供すればいい。会議の参加者がみんな読んでいるデザインブログに広告を出そう。

自分たちのデザインをもとに素人っぽいウェブサイトを立ち上げた。サービス名は「エアベッド&ブレックファスト」だ。2人はデザインブログと会議の主催者にメールを送り、サイトを宣伝して欲しいと頼んだ。すると、数日もしない内に3人から予約が入った。

2人はアイデアを誰にでも売り込んだ。チェスキーは憧れのデザイナーにコンセプトを語った。彼は言った。「アイデアってまさか、それだけじゃないよね」。それはチェスキーが何度も出会うことになる現実の壁との初めての遭遇だった。

核となるコンセプト

2人は優秀なエンジニアのブレチャージクを引き入れ、本物の起業アイデアを考え始めた。結局、エアベッド&ブレックファストを立ち上げることにした。国中で開かれる大規模な会議の期間中に泊まる場所を探すためのサービスにしよう。

新しいサービスを発表する理想的な舞台もあった。テクノロジー業界最大のイベント、サウス・バイ・サウスウェストだ。しかし、サウスバイの後、サイトへのアクセスはぱったり止まった。落ち込んでいたが、その年は大統領選挙の年で、民主党大会が開かれる予定になっていた。もう一度試してみることにした。この時期に、新生エアベッド&ブレックファストの壮大な将来像が見えてきた。大規模なカンファレンスに的を絞るより、ホテル予約と同じくらい簡単に誰かの部屋を予約できるようなウェブサイトの方がいい。それは、今のAirbnbの核になるコンセプトだった。

風前の灯

3人はプロダクトの改良を続けた。民主党大会が近く頃に、サイトでスムーズに支払いができるようになり、レビューシステムも立ち上がり、新しい宣伝文句も決めていた。「地元に密着した旅行体験を」

しかし問題があった。宿の供給だ。誰も予約しないのに、部屋を貸し出そうという人はいない。部屋の掲載がほとんどなければ、誰もサイトを使おうとは思わない。そこで地元の小さなブログに話題を提供すると、ドミノ効果が起きた。話題が人気ブログに取り上げられ、地元紙に掲載され、全国紙で取り上げられた。しかしその成功もまた、つかの間だった。予約ははいったしマスコミにも注目されたが、党大会が終わるとトラフィックは消え失せた。

宇宙船が飛び立った

ローンチが終わり、一文無しになり、借金を背負い、サイトは閑散としていた。2008年11月のある夜、Yコンビネーターに応募してみろと言われた。面接後、3人は6%の株式と引き換えに2万ドルの種銭を受け取り、Yコンビネーターに入学した。チェスキーたちは、ユーザーに会い、ホストの写真が下手だという大きな弱点を発見した。そこでプロの写真家をタダで送り込んだ。さらに朝食を出さなくてもいいことにし、部屋をまるまる貸し出すオプションも加えた。この頃にエアベッドの条件を外して「Airbnb」として潜在市場を広げた。

デモの日が近づき、サイトに人が集まる兆しが見え始めた。予約数が上がり始め、1日20件を記録した。売上は週1000ドルになった。3人は潜在顧客が存在する優良市場を見つけ、同時にその市場を満足させられるプロダクトを生み出した。そして、これまで売り込んだ投資家にはことごとく相手にされなかったのに、ベンチャーキャピタル界の名門セコイアが投資してくれた。このことが決定打となった。