『リアル店舗』で日本百貨店が実現する モノヅクリ「おもいやり」マーケティング

発刊
2017年9月15日
ページ数
224ページ
読了目安
229分
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推薦者

リアル店舗の役割とモノを売るための秘訣
伝統工芸品や食品など、地域産品のセレクトショップ「日本百貨店」を展開する著者が、リアル店舗で商品を売るために必要なことを紹介する一冊。

ものづくりの百貨店

日本百貨店は、2010年、東京・御徒町の「モノヅクリ」をテーマとした商業施設「2k540」の中に生まれた。「ニッポンのモノヅクリの百貨店」を目指す、小さな雑貨店である。「ニッポンのモノヅクリにお金を廻す」を目標に、たくさんの作り手とたくさんの使い手との出会いの場であることを目指している。

オープンして7年弱、店は東京駅や秋葉原など7店舗に広がった。7つの店には、年間で累計70万人を超えるお客さんが来店している。日本百貨店は作り手と使い手の出会いの場を増やすことに力を入れている。

日本百貨店の全ての原点は「ヒト」にある。商品仕入れは、必ず作り手と会い話をして、生産現場を見て、お互い信頼関係を築いて一緒に取り組むという意識を持って行う。「このヒトの商品を売りたい」と思える商品を迷わず選ぶ。

出会いの場こそが価値

リアルの小売店舗の運営が厳しく、大手小売がネット通販に活路を見出そうとしている。店舗を増やせば人も増やさなければならないし、設備投資も必要となる。

しかし、「作り手と使い手の出会いの場」は、リアルの場の出会いの方が様々な化学反応を起こしやすい。目の前で作り手の技を見る、考えを聞く。実際にモノに触れてみる。わざわざ時間を使って会いに行くことで、その1つ1つのプロセスが、バーチャルとは違い実感を与えてくれる。そして、検索することすら思い浮かばなかった、全く「新しいもの」「新しいヒト」との出会いを創出してくれる。作り手にとっても使い手にとっても、売り手にとっても、様々な機会を与えてくれる「出会いの場」こそが、リアル店舗ならではの価値である。

作り手が売るために必要なこと

日本の作り手には、マーケットとのマッチングをきちんと考えた商品づくりと、その特性や利点をきちんと伝えるブランディングの2つを常に念頭に置いて、陽の当たる場所に自ら出ていくという姿勢が、今まで以上に必要とされている。

イイモノであっても理解されないと、流通はされない。他の地域との比較や、どこがどう他と違うのか、特別なのか、何に使えるのか、という具体的な説明がされないと、本当に「イイモノ」なのかが伝わってこない。値段については、これだけ手間がかかっているからこの値段なんだという、作り手理論よりも、その手間暇でプラスされる価格を、使い手が納得して払えるかどうかのバランスが取れているかが重要である。

おもいやりマーケティング

相手の立場を常におもいやり、行動しないと、何事もうまくいかない。自分のことだけではなく、全体が良くなるように、常に周りを気遣う。例えば、商品を並べる時には、常に「おもいやり」を持つように、スタッフ同士の合言葉にしている。男性スタッフが棚に商品を置く場合は、自分より背丈が10cm低い女性のお客さんの目線から見たらどう映るか。なので、膝を曲げて視線を落として見るようにと話す。また、一番上の棚で倒れた状態で置かれているノートがあったとして、誰が興味を示すか。これも使い手の目線に合わせた高さで、目に入るように立てておくべきである。

これら「おもいやり」の源泉は、想像力である。こうやって置かれていたら、お客さんはどう思うだろう。こうやったらどうかな、これはどう思ってこうしているんだろう。常に頭の中で想像し、自分の進む道を創造する。